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BLUE・STORYⅡ  作者: 森田しょう
◆第2部:覚醒への御印~Wander der Geist und Seele zu führen~
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37章:覚醒への御印④


 なぜ、あいつが立っているんだ。さっきまで、全く身動きできなかったのに。


「貴様……何を――!」


 ウルヴァルディが何か言いかけた時、ディンの体が青く輝き始めた。その光は大きく広がり始め、奴はそれに触れないために、後方へと跳躍した。


「……これ以上、誰も傷付けさせはしない!」


 ディンは拳を強く握りしめ、クレセンティアを取り出した。その刀身はいつものような薄い青透明なものではなく、光が溢れているかのように輝いていた。

「ディ……ン、お前……」

 俺の言葉に応えるためか、彼は俺の方へ微笑みを向けた。

 ――青い瞳が、まるで生きているかのように煌めいていた。それはどこか、神々しさを纏わせているように感じた。俺の知っているディンは、高みの生命になったのだ――と。

「……サラを、連れてくるよ」

 ディンはそう言って、正面へいるウルヴァルディの方へ突撃した。それと同時に、彼を包む青い光が尾を引くようにして漂っていた。


「貴様、まさか……!」

「ウルヴァルディ!」


 ディンは奴に切り掛かり、ウルヴァルディはそれを光の槍で受け止める。


「お前に、ゼノから大事なものを……奪わせはしない! ラケルを……サラを返せ!」


 ディンは普段のような優しい声ではなく、滅多に表さない怒りを携えていた。

 ディンとウルヴァルディは宙に浮かび、そこで互いの武器をぶつかり合わせた。音と共に地鳴りがするような衝撃波が、俺たちの方まで届く。

「さっきまで、少しも動けなかったのに……ディンは、一体……?」

 俺に治癒術を掛けながら、メアリーは呟いていた。あれでは、まるで俺の時と同じだ。体の奥底にある何かが解放されたかのように、体が軽くなったのだ。だが、俺はそれでも奴に傷一つ負わせることが出来なかった。……しかし、ディンは違う。ウルヴァルディとやり合っているようにしか見えないのだ。


「無限の旋律――アイン・ソフ・アウル!」

「ぬっ――!」


 青い光が、ディンを中心に収束していく。そして一気に、周囲へ広がっていった。それはウルヴァルディをも呑み込み、俺の時と同じように身体の動きが止まった。

「これは――そうか、貴様……“扉”を開いたな」

 宙で制止したウルヴァルディだが、言葉は発せられるようだった。

「僕を“ここまでさせた”のは、お前だ。責任はとってもらう!」

 ディンはそう言って、クレセンティアを奴に向かって振り抜いた。その斬撃は青い閃光となって、ウルヴァルディを吹き飛ばした。奴は壁に打ち付けられ、その一帯に亀裂が入り崩れて落ちていった。


「喰らえ――インフィニティ!」


 ディンは左手を前に出して、掌を広げた。青い光の粒子が流星群のようにそこへ集結し、一つの巨大な光線となってウルヴァルディが吹き飛んだ先へと突っ込んでゆく。そこで大きな爆発を起こし、轟音と共にさらに壁は崩れていった。粉塵が舞い上がり、ウルヴァルディの姿を見ることはできないほどだった。

 それを一瞥したディンは、サラの下へと駆け寄って行った。

「サラ、待たせたね。今、そこから降ろすから」

「ディ……ン、ディン……!」

 涙でぼろぼろの顔で、彼女はディンによって鎖を破壊され、床に降り立った。

「怖い思いをさせて、ごめん。怖かったろ」

「……う……うぅ」

 サラは俯き、嗚咽を漏らし始めた。どこか愛おしく感じたのか、ディンはまるで子供を落ち着かせるかのように、彼女の頭をポンポンと軽く叩いた。

「ほら、早くゼノのところへ行ってあげて。ずっと心配していたんだから」

「…………」

 サラはこくりと、大きく頷いた。そして手で涙を拭い、台座の階段を下りて行った。


「ゼノーー!!」


 サラは俺の名を呼びながら、俺に飛びついて来た。その衝撃で痛みがよりひどくなっても、隣にメアリーがいようがお構いなしに、彼女は俺の体を強く、強く抱きしめた。

「ゼノ……会いたかった……」

「……サラ……」

 泣きじゃくる彼女を見ていて、痛みなんかどうでもよくなっていた。ただ彼女が、ここに帰って来られた。それだけで、俺は妙な満足感を得ていた。本当に、それだけでよかったのだ――と。

「う……うぅ……うっ……」

 俺の胸に顔をうずめたまま、サラはより泣き始めてしまった。泣き虫な彼女らしい――と思いつつ、メアリーがぼんやりとした眼差しで、サラを見ていた。

「……本当に、よかったわね」

 ポツリと、メアリーは言った。その表情はいつになく穏やかなもので、子供を見つめる母親のような優しさの片鱗が混ざっているものだった。


 その時、ガコン――と、何かが動き出すような大きな音が響いた。かと思いきや、地震が再び起こり始めたのだ。上空からパラパラと小さな破片が落ちてくる。

 何かが……動いているのか? まるで、このコロニー自身が揺れてしまっているような……。


「滅びの門が開いた。ここは塵になる」

「――!!?」


 その時、一瞬ウルヴァルディがいるであろう場所から、光が漏れたように感じた。それに合わせて、ディンがあの台座の上で、跪いたのが見えた。

 ――あの光の槍が、ディンの足を貫いていたのだ!

「ディ、ディン……!」

「待って、動かないで。まだほとんど治っていない」

 動こうとする俺の体を抑えつけるように、メアリーは俺を睨みつけた。

「それに、ディンは大丈夫よ。自分で槍を抜いているもの」

「え――」

 そう、ディンは自分で何事もなかったかのように、光の槍を足から抜いていたのだ。少しだけ出血があったものの、翡翠色の淡い光が傷口を覆ったかと思うと、一瞬でそれは無くなってしまっていたのだ。

「僕なら大丈夫。それよりも、この振動は……」


「この場所は消える、ということだ」


 声と共にマントをはためかせて、宙に浮いているウルヴァルディの姿があった。ディンにあれだけ攻撃されて……無傷かよ……!

「ここはまもなく、ブラックホールに呑まれて消える」

「ブラックホール!?」

 ど、どういうことだ……!?

「封印は解かれた。古の盟約により、イヴの力がアーネンエルベと共鳴したのだ。そして――」

 ウルヴァルディはマントを脱ぎ、後ろへ放った。いつも半分ほど隠れて見えなかった奴の顔が、はっきりと見ることが出来た。波打つような、焔色の髪。そして優しさや慈愛が微塵も含まれていない、冷徹な血のように紅い双眸。光の槍を携えたその様は、まさに“死神”と評するに相応しいのかもしれない。


「貴様らをここから出すわけにはいかない。特にディン、ゼノ。貴様ら二人はな」


 奴は左手を掲げた。すると光の円環が奴の後ろに広がり、そこから光の槍がいくつも出現した。それらの矛先は、全て俺たちに向けられていた。

「くっ――!」

 それを見たディンはすぐさま俺たちの方へ戻ろうとした。それと同時に、光の槍らも俺たち目掛けて飛んでくる。


「無限の旋律――アイン・ソフ・アウル!」


 ディンは俺たちの前方に立ち、あの亜空間を発生させた。それは先ほどよりも大きく広がり、光の槍から俺たちを護る巨大な防壁となった。


「ゼノ、みんなで一緒に逃げるんだ」

「……え」


 何を言っているんだ――と、俺は心の中でそう言うだけで、驚きのあまり言葉が出てこなかった。

「奴は僕が食い止める。今の僕なら、奴を抑えることくらいはできるから」

 違う、何を言ってやがる。そういうことじゃない。食い止められる・食い止められないっていうことじゃないだろう!?

「ディン、お前……何言ってんだ!」

 俺は絞り出すように、声を放った。

「そうよ! 逃げるなら、一緒に逃げよう?」

 サラも涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げて、言った。俺たち二人は、お互いに同じことを思っている。なぜディンだけが、残ろうとしているのか。

「……さすがに、みんなを庇いながらじゃあ、奴を止められない。今だって、なんとかこの空間を出して防いでいるけど、そんなに長くは持ちそうにない」

 ディンはそう言って、苦笑した。その横顔には、苦悶の表情が広がっている。

「僕のことはいい。はやく、みんなで逃げてくれ」

「ば、馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ! お前を……お前を一人にしていけられるか!」

「ちょっと! 動かないでって言ってるでしょうが!」

 俺が立ち上がろうとすると、それを制止しようとメアリーが俺の肩を掴み、抑え込む。


「……本気なの?」


 サラは、そう訊ねた。ディンを真っ直ぐに見て。

「ああ」

「……どうして……? 一緒に、帰ろうよ」

 サラの声が震える。

「みんなで、帰ろうよ。折角、会えたのに……! ねぇ、ディン!」

 彼女は胸に両手を当て、懇願するように言った。切実な願い――純粋な想い。それが彼女の瞳から、涙の雫となって溢れ出す。

「……サラ、君にはゼノがいる。ゼノが、サラを護ってくれる。今までも、これからも」

 彼は横目でサラを見ながら、優しく語り掛けるようにして言った。

「だから僕がいなくなっても、大丈夫。何も心配はいらないよ」

「いなくなっても――!? 嫌、そんなの絶対に嫌だよ!」

 拒絶するように顔を左右に振り、彼女は大声を放った。それは全身全霊の拒否、拒絶。そういうことだと少しでも思っていたとしても、口には出したくなかったものだったのだ。それは――俺も同じだ。

「ディン、なんでだ……? お前が残る必要なんかない。傷が治りゃ、俺もすぐに……」

 あいつと協力すれば、もしかしたらウルヴァルディを倒せるかもしれない――などと、本気では思っていない。俺には、さっきみたいな力は出せないという確信があった。それでも、ディンを一人にはできない。一人になんかさせたくないのだ。可能性よりも……俺がただ“そうしたい”という願望だった。


「じゃあ、誰がサラを護るんだ!」


 俺の願望を消し飛ばすように、ディンは言った。

「ラケルとの約束だろ!? サラを護るって……約束したじゃないか!」



 ――サラちゃんを護ってね。お願いよ――



 あの時の……彼女の姿が浮かぶ。たしかに、そうだけど……。

「僕は君を護る。だから、サラは……頼む」

「……ディン……」

 少しの間の沈黙。地鳴りが響き、瓦礫がどんどん落ちてくる。床にも少しずつ亀裂が入り始め、崩壊が始まろうとしていた。


「あの時、ゼノに出逢えてよかった」


 その沈黙の中で、ディンは“言う”のではなく“伝える”ようにして言い始めた。

 あの時――そう、あの時だ。ディンがいじめらていた時。サラがそれを見て騒いで、それでいじめっ子たちがサラをこけさせて……。だから俺は、そいつらを殴ったのだ。結果的に、ディンを助けることになるなんて、考えもしなかったのに。

「ゼノが僕を助けてくれたから、僕の人生に彩りがつけられた。そして、サラやラケル、多くの友人……フィーアにも出逢えた」

 ディンは優しく微笑み、目を瞑った。

「“ジョセフ=ロヴェリアの息子”である僕を、他の人たちと分け隔てなく接してくれて、本当にありがとう」

 どうして……そんなことを言うんだ。どうしてこんな時に、そんなことを言うんだよ。

「ディン、お礼を言う必要なんか……ねぇよ。俺だって、ディンに出逢えて……本当に……」

 どうして俺まで、そんなことを言ってしまうんだ。心が――俺の魂が、言わなければならないと命令しているかのようだった。


「助けられてばかりだった。俺も、お前に救われたんだよ……!」


 俺だって、異質な子供だと……周囲に怖がられていた。幼い俺が、そういった視線を浴びることに耐えられるほど強いわけでもなく、苦しんでいたのだ。


 そう、苦しかった。辛かった。


 そんな気持ちを……親父やおふくろ、妹のようなサラに言えるわけはなかった。

 だから――ディンは、俺にとっての最大の理解者だった。サラとは違う、“対等な友”なのだ。

「……そう言ってくれて、ありがとう。それを聞けただけで、僕は十分だ」

 ディンは俺たちの方へ振り向き、大きく頷いた。彼の口元には血が滲んでいて、額からも血液が垂れていた。彼自身も、傷を負っているのに……なのに、ディンの表情には口では表現できないほどの、満足感が浮かんでいた。


 その時――



「ゼノォォォォー! メアリー!」



 大声と共に、このフロアへ通じる巨大な扉がぶち抜かれた。豪快に轟音を立てて入ってきたのは――まさか、飛行船!? 大昔ではスペースシャトルと呼ばれていた代物で、少人数での移動によく使われるタイプのものだ。

 その飛行船は床の大理石を削り取りながら減速し、旋回してこちらの方へと向かってきた。その上に、大声の主――ローランがいた。


「救出にきったぜー!」


 10メートルほど先へ停止した飛行船から飛び降りたローランは、俺たちに方へ駆け寄ってきた。

「ど、どうしてあなたが?」

「まあまあ、それよりも」

 メアリーの言葉を遮り、ローランはウルヴァルディが浮かんでいる空中の先へ目をやった。


「……アーサーの飼い犬か」


 ウルヴァルディは小さく笑い、腕を組んだ。

「お久しぶり~、ウルヴァルディの旦那。悪いけど、ゼノたちは回収させてもらうよん」

 ローランはそう言うと、俺の体を抱えようとし始めた。

「お、おい、ローラン……!」

「言いたいことはわかってる。ここはディンに甘えな。俺が一緒にやっても、勝てる可能性はかなり低い相手だ。……それに、このコロニー自体がもたない」

 たしかに、地鳴りはさっきよりも大きくなっている。このフロアの壁などにも亀裂がそこかしこに入り、氷が割れていくように崩れ始めていた。


『ローランさん、みんな、はやく! このコロニーが崩れ始めてるって!』


 飛行船から、カールの声が拡声器によって響く。かなり緊迫したもので、ここへは急行してきたのだろう。

「ゼノは俺が抱えるからよしとして。君、立てるかい?」

 ローランはサラの顔を覗き込むようにして、言った。だが、サラはただ真っ直ぐディンを見つめたままだった。


「……嫌だよ……ディン」

「…………サラ」

「私、ディンに何もしてあげれてない。なのに、助けてもらってばかり。護られてばかり。今だって……私、何もできていない……!」


 サラはそう言いながら、手で顔を覆った。大粒の涙がまた止めどなく流れ、何度拭ってもきりがないほどに。


「君は気付いていないだけだよ。君の笑顔に、何度救われたことか」


 ディンはニコッと微笑んで、諭すように続けた。

「だから笑顔で居続けてくれ。サラが笑ってくれたら、僕もうれしいんだ」

 サラの笑顔が、自分の心が救われた。それは様々な時で、思い当たることがある。俺自身が、そうであるように。


「……さよならは言わない。だから……ね、サラ」


「ディン……!」

 ディンが頷くと、サラも小さく……小さく、確かに頷いた。もうそうするしかないと、ようやく形にして。

 それを見たローランは、無言のまま俺を担ぎ、サラの肩をポンと軽く叩いた。

「さあ、行こう」

 サラは再び頷き、歩き始めたローランの後を付いて行き始めた。

「……じゃあね、ディン。いろいろ、ありがとう……」

「……ごめんね、メアリー。ゼノたちのことを……頼むよ」

 メアリーもディンを一瞥し、飛行船へと向かって行った。



 乗る間際、俺は尻もちをついたまま呆然と宙を眺めるフィーアに気付いた。ただウルヴァルディの方を、ジッと見つめていたのだ。


「……フィーア!」


 その時、飛行船からメアリーが飛び出て行った。フィーアの下へ行き、彼女を起こそうとしている。

「一緒に来なさい。あなたには、説明する責任がある!」

「……メアリー……でも、私は……」

 か細い声で、否定するように顔を振るフィーア。

「あなたがここで死んだって、意味はない! ディンが助けようとしてくれてる気持ちさえも、裏切るっていうの!?」

「…………」

 それまでの――今までの彼女にはない、弱く、脆い姿だった。信じていたものに裏切られた者は、誰もがそうなるのだ。たとえ強い人間であっても。

 俺は機内に入る直前、大きく息を吸い、自分の声を絞り出した。



「フィーア!!」



 地鳴りにも、飛行船のエンジン音にも負けないほどの声量で。それが耳に届いたのか、フィーアはゆっくりと俺の方へと顔を向けた。

「ゼノ……」

「フィーア!! 来い!」

 俺はもう手を差し伸べるように、届きもしないのに、彼女の方へ向けて手を大きく伸ばした。力が入らず、プルプルと震える手が、なんとも情けなかった。

「………」

 生気が戻るかのように、彼女の瞳が揺らぐ。冷たい宝石のような双眸に、命の灯が戻ったかのように。

 メアリーは彼女の腕を抱えて、飛行船へと向かった。俺たちもそれを見て、機内へと進む。



 俺は機内の両端に備えられている座席に横にされ、ノイッシュやディアドラたちに声を掛けられた。そのどれもが遠くに感じ、俺の意識はまどろみの中へと沈んでいった。

「ゼノ……ゼノ!?」

 その中で、サラの声だけが、はっきりと届く。そこには、ディンの声も届いているような気がした。



「僕、ディンって言うんだ。……君は?」



「ど……して、今……」

 どうして、今そんなことを思い出してしまうのだろう。初めての会話を……一番最初の会話を、なぜ……。


「またいつか逢おう。……ゼノ」


 彼の言葉が、聞こえる。それは魂を通してのものなのか、それとも幻想なのか……わからない。それでも、俺は。

「また……な、ディ……ン」

 俺は小さく、言った。たしかに、はっきりと。その言葉が彼に届いていると、なぜか確信があった。必ず彼の心に辿り着いている――と。



「クルセイダー、発進!」



 そして、機体が大きく揺れる。それと同時に、俺も気を失った。

 ディンとの出逢いを……眺めながら。










 床は崩壊し始め、大理石の壁が崩れて落ちてくる。振動は激しさを増し、このコロニーが消えるのは、あとちょっとだと感じるほどになった。


「どうして、止めようとしなかったんだ?」


 ディンはそう訊ねずにはいられなかった。ウルヴァルディはゆっくりと下降し、着地した。その表情には、微笑が浮かんでいる。

「その方が“好都合”なのさ」

「……?」

 その時、ウルヴァルディの背後に光の柱が出現した。それは徐々に姿を成していき、人の姿を形成した。


「この時を待っていたよ。ディン=ロヴェリア」


 そこに現れた男は、小さく拍手をしながらディンの名を呼んだ。

 その男を見たディンは、驚愕した。瞬きを忘れるほどに。

「どうして……あなたが……!?」

 典型的な言葉。それしか出てこなかったのだ。

 男はフッと微笑み、ウルヴァルディの横に立った。




「これも運命だよ。……そうは思わないかい?」







第二部、完


第三部へ続く


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