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第一章 第九話 屋敷に住む幽霊の女の子

 俺は婚約者と手を握り、義妹をおんぶしながら古びた屋敷の中を探索している。


 さて、目的のものは屋敷の地下にあったはず。原作では詳細は書かれてはいなかったけど、確かキングサイズのベッドがある部屋の中に、地下につながる階段が隠されてあったはず。


 ここは効率よく、みんなで手分けして探したいところだ。しかしカリンもセリアもお化けやホラーが苦手で、俺から離れられない状態になっている。


 運よく当たりの部屋を見つけられることを祈るしかないな。


「それにしても、魔物が出て来ませんね。アスラン」


「そうだな。原作……俺の未来予知では普通にレイスが徘徊しているはずだったのだが」


 これも俺がざまぁされなかった影響なのだろうか。もしそうなら、地下につながる階段の場所も変わっている可能性もあるな。


「お兄様、あの部屋から不思議な魔力の流れを感じます」


 セリアが指差したあの部屋、ネームプレートには書庫と書かれてあるな。


 彼女の言う不思議な魔力の流れと言うものが気になるし、あの部屋を調べてみるか。


「あの部屋を調べてみよう。だけど俺の未来予知にはなかったものだ。念のために警戒を緩めないように」


 部屋の中に入ると、半透明の骸が空中に浮遊している本をジッと見ていた。


 レイスだ。ここでエンカウントしたか。だけどまだ俺たちには気づいてはいない様子だな。本がペラペラと捲られているところを見ると、読書をしているみたいだ。


 こんなレイスは原作には登場していなかった。


「あの魔物はまだ俺たちに気づいていないようだ。セリアが言っていた不思議な魔力の流れの発生源はあの魔物か」


 俺は小声で義妹に声をかける。


「違います。私が感じたのは、あの魔物ではありません」


「そうか。なら、気づかれないうちに書庫内を調べよう」


 読書に夢中になっているレイスから離れようとすると、俺の足が本棚に当たった。


 あっぶな! 日本だったら裸足だったから、激痛を感じて叫んでいたかもしれない。西洋風の世界で本当によかった。


 そのように安心したときだ。俺の足が当たった衝撃で、本棚から一冊の本を落としてしまった。


 しまった!


 急いでレイスの方を見ると、やつは読書を止めて俺たちの方を見ていた。


『し、侵入者! よくもわたしの聖域に踏み入れてくれたな! 追い出してやる』


「ちっ、戦闘になってしまったか。カリン、セリア、戦闘準備だ」


「でも、どうやってレイスを倒しますの? 聖属性の魔法は使えませんわ」


「それが使えるんだよ。俺が密かに習得しておいた」


「さすがお兄様です。それなら、ここにいるレイスも瞬殺ですね」


「ゴッドブレス!」


 スキルオーバーイメージを発動させて、俺は脳内で三人の身体全体に、光が渦巻くイメージを作る。すると、俺の想像どおりに魔法が発動した。


「これで物理攻撃も、魔法もあのレイスにダメージを与えることができる」


『食らえ!』


 本棚からたくさんの本が飛び出すと、俺たちに向かって飛んできた。


 俺は二人を本棚の陰に隠すと、守るように前に出て次々と本を叩き落としていく。


『お前! わたしの大事な本になんてことを! もっと大切に扱いなさい!』


 いや、そんなに大事なら攻撃に使うなよ。


 敵の攻撃を避けつつ、レイスに接近していく。


『く、来るな! 変態! 痴漢! 女の敵!』


「誰が変態だ! 男だからってケダモノ扱いしてんじゃねぇ!」


『きゃあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


 俺はレイスの身体をぶん殴るフリをして抱き締めた。


 すると魔物の身体からは煙のようなものが噴き上げ、半透明だった骨は肉付きされていく。


 やっぱりな。声や言葉使いからして女の子だと思ったよ。流石に魔物であっても、女の子に暴力を振るうわけにはいかない。


 レイスは死んだ後の霊魂が、自分が何者だったのか、どうして成仏できずにこの場に留まり続けているのかわからない状態で何年も経ち、闇堕ちした姿だと言われている。


 聖属性の力を纏った俺が彼女を抱き締めたことで、悪き心が浄化されて人間の霊としての姿を取り戻した。


 本来の姿になったことで、攻撃的ではなくなったはず。


 俺は彼女を抱擁から解放して距離を空ける。


 あれ、肉付きはしたけど、服の再現はされないのか? 胸やあそこも丸見えじゃないか。


「アスラン! 見てはいけませんわ」


「お兄様! 見てはいけない」


 婚約者と義妹が俺に駆け寄って来ると、セリアが俺の背中に乗って目を隠した。


 いや、確かに全裸の女の子だけど、相手は幽霊だぞ。幽霊の身体を見て興奮するほど、俺の性癖はやばいものではないはずなのだけど。


「あなたも今すぐ服を着てください!」


『服を着ろと言われても、生前どんな服を着ていたのか覚えていない。だけどさすがに殿方の前で、全裸でいられるほどの痴女ではないからな。とりあえず、あなたの服をトレースさせてもらう』


 しばらくしてセリアが俺の目から手を離すと、幽霊の女の子はカリンと同じドレスを着ていた。


「お前、名前は?」


『名前? 名前などレイスになってからは覚えていない。ただの幽霊でいい』


 いや、ただの幽霊と言われても、それだと呼びにくいんだよな。


「なら、お前に名前をつけよう。そうだな……レイナでどうだ?」


『レイナか。まぁ、まぁなネーミングセンスではないか』


 一応褒めてくれているんだよな?


「レイナ、俺たちはこの屋敷にある幻惑の杖を探しに来たんだ。どこにあるか知らないか?」


「幻覚の杖? ああ、多分アレのことかな?」


 レイナが書斎の奥にある壁をすり抜けていくと、数秒で戻って来た。彼女の手には赤い宝石が埋め込まれてある杖が握られてある。


 間違いない。幻惑の杖だ。


「これがあなたたちが探していたもの?」


「ああ、そうだ」


 彼女から幻惑の杖を受け取ると、杖を確認した。


 うん、魔力切れになっている感じはしないし、問題はなさそうだな。あとはこれを売れば大金が手に入る。そのお金で冒険者たちに前金を払い、三百体の魔物を倒したあとに素材を回収。それを売却して得た金で残りの五十万ギルを五十人の冒険者に渡せば、問題ないはずだ。


 杖が手に入った以上、もうこの屋敷には用がない。


「俺たちはもう帰るが、レイナはどうする? 俺たちと一緒に来るか?」


「申し出は嬉しいけど、わたしはこの屋敷からは出られない。だから、ここに残るわ。ここには何度読み返しても面白い本がたくさんあるから、飽きることはないの」


「そうか。たくさん本を読んでいるのなら、膨大な知識を持っていそうだな。何かわからないことがあったら、その知識を借りにくるよ」


「うん、待っている」


「それじゃ、また」


 レイナに別れを告げ、俺は書斎から出て行く。


「アスラン、優しいのね」


「さすがお兄様です。私が尊敬するだけはあります」


「何のことだ?」


「惚けなくてもいいですわ。レイナちゃんが寂しくないように、またあの屋敷に行く約束をしたじゃないですか」


「さりげない約束でしたが、それがとても魅力的です」


 二人にはそんな風に捉えられたのか。女心と言うものは、本当に理解するのが難しいな。


 最後まで読んでいただきありがとうございます。


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