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第一章 第五話 原作の知識がある限り、俺は無敵だ

「追放サイドが最強で何が悪い! 絶対にざまぁされないからな!」


 俺は高らかに声を上げる。


「エンハンスドボディー!」


「くたばりぞこないが! これで終わりにしてやる!」


 魔族の男が俺の額に拳を叩き込んだ。


 バキッ!


 あーあ、今骨が折れる音がしたじゃないか。大丈夫なのかよ。


「ハハハハハ! 今、お前の頭蓋骨が割れる音が聞こえたぞ! もうお前はお終いだ!」


「アスラン!」


「お兄様!」


 なに言っているんだよ。お終いなのはお前の方じゃないか。


「ハハハハハ……あ? ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァ! 俺の腕がああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 だから言ったじゃないか。俺にはダメージを与えることができないって。今のお前は、腕が粉砕骨折している。もう、その腕はしばらく使えない。


 俺を殴った魔族は、右腕を押さえながら涙を流し、苦痛で顔を歪めていた。


「く、くそう。よくも俺の腕を……下等生物如きが」


「その下等生物から腕を使い物にされなくされた今の気分はどうだ? 上等生物の魔族さん」


「クソ雑魚の分際で調子に乗りやがって!」


 今度は爪を伸ばして斬りかかろうとしているようだな。なら、少し残酷ではあるが、そっちの腕も使えなくさせてやる。


「ウォーターカッター!」


 呪文名を言いながら、俺はイメージを強める。


 空気中の水分子が集まり、一つの水となる。そしてその水は細さ一ミリにまで凝縮する。


 原作に書かれてあった描写を頭の中でイメージすると、脳内で浮かべたとおりに切断力の高い水が空中に現れた。


「狙うはやつの左腕だ!」


 俺は左腕に狙いを定める。ロックオンすると、魔法が発動して魔族の左腕に向かって細長い水が飛んで行く。


 切断力の高い水が魔族の左腕に当たると、やつの左腕は吹き飛ぶ。切断面から大量の血液が噴き出した。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァ!」


「これで分かっただろう。右腕はボロボロ、左腕を失ったお前にはもう、俺には勝てない」


「ふざけるなあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! この俺が、人間如きに負けてたまるかあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「お前には散々痛めつけられたんだ! ざまぁサイドらしく、楽には終わらせない! グラビティープラス」


「ガハッ!」


 魔族の男に、巨大な重力の塊が降り注ぐイメージを頭の中に浮かべせる。するとやつは地面に倒れ、口から血を噴き出した。


 本当はこんな陰湿なことはしたくはないけど、初回だけは許してくれるよな。だって、俺の中に溜まっているヘイトが全然解消されていないもん。


 本当は爆発を発生させる合成魔法で、汚い花火を打ち上げたかった。だけど、それをしたらここのダンジョンが崩壊するかもしれないからな。ここは我慢だ。


「十キロ、二十キロ、三十キロ……」


 魔族の男が起き上がろうとする度に、降りかかる重力の重さを増やしていく。


 重さが強くなる度に、地面が抉れた。


 さて、どこまで耐え切れるかな?


「四十キロ、五十キロ、六十、七十、八十、九十、百キロ!」


 百キロの重さを魔族の男に与え続けると、やつは車に轢かれたヒキガエルのような体勢で、抉れた地面にへばりついて動かなくなっていた。


 やつに近づき、魔族の身体を仰向けにさせて胸に手を置く。


 魔族の男の心臓は既に止まっており、動いてはいなかった。


「討伐完了だ!」


「アスラン!」


「お兄様!」


 俺が魔族を倒したことを言うと、カリンとセリアは走って俺に抱きついてきた。


 思いっきり俺の身体が押し倒されそうになるが、足を一歩下げて踏みとどまった。


「本当によかったですわ。アスランが魔物に吹き飛ばされたとき、わたくし思わず泣きそうでしたの」


「さすがお兄様です。私は信じていました。だって私のお兄様が魔族に負けるはずがないもの」


 俺も正直勝てる気がしなかった。あの時、運良くスキル玉が近くに落ちていなかったら、俺はあの魔族に負けてざまぁされていただろう。


 だけどこれでカリンは俺のパーティーに居続けてくれる。婚約破棄のフラグをへし折り、俺はダブルざまぁを回避することができた。


「さぁ、帰ろう。スライムはいなかったが、魔族は倒したんだ。依頼失敗にはならないだろうさ」


「何を言っていますの? アスラン?」


「第九層でスライムを倒したじゃないですか? 私、証拠となる核を回収していますよ」


 セリアがポケットの中から赤い玉を取り出した。


 あれ? そう言えば第九層で三体のスライムを倒したな。原作では最下層にいるスライムストラテジストと戦っていたから、あいつを倒さないといけないと思い込んでいた。


 よく考えれば、ギルドマスターは一言もスライムストラテジストの討伐とは言っていなかったものな。


 それにしても、どうしてキーファが現れなかったんだ? 最下層に魔族が現れるし、原作にはないスキルを俺が手に入れるし、なんだか嫌な予感がするな。


 まぁ、情報が少ない状況下で色々と悩んでも仕方がないだろう。ひとまずは依頼達成と、ダブルざまぁを回避できたことを喜ぼう。


 今日は本当にいい気分だ。今日飲む酒は一段と美味いだろうな。


 そんなことを考えつつも、俺たちはダンジョンから出てギルドに向かった。


「ほら、討伐の証であるスライムの核だ」


 ギルドに辿り着いた俺たちは、ギルドマスターに討伐の証であるスライムの核を見せる。


 魔族に関しての報告は、今は控えておこう。もしかしたらただの偶然かもしれないし、余計な情報は逆に混乱を招くことにもなる。


「うむ、確かに本物のスライムの核だな。本当によくやってくれた。それでこそSランクの冒険者だ」


 ギルドマスターが顔を綻ばせて何度も俺の肩を叩く。


 そう言えば、キーファがスライムストラテジストを倒した時も、同じような感じの描写がされてあったな。


「それじゃ、俺たちはこれで帰らせてもらう。今日は予想外のことが起きて疲れた」


「ああ、本当にありがとう。お前が居てくれて本当に助かった」


 やっぱり人から褒められると気分がいいよな。会社の上司も、ギルドマスターのように接してくれれば、仕事にもやる気が起きるのに。まぁ、今の俺には関係ないか。今の俺はサラリーマンではなく異世界の冒険者だ。


 踵を返してギルドから出て行こうとすると、窓から一羽の鳥がやってきた。


 あの鳥はフクロウに似ているな。つまり、あれは原作で言うところのリピートバードと呼ばれる鳥だ。


 うん? 待ってよ。リピートバードがギルドマスターのところに来たってことは……まさか!


 次のざまぁが始まったってことじゃないよな!


 最後まで読んでいただきありがとうございます。


 この物語が面白いと思ってくださった神様のような方へ


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『今後の展開が気になる! 次はいつ更新されるの?』


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