最終話 夢から現実へ
俺はキーファの姿をしている先生に殴りかかった。
実験に協力したのはいい。だけど、今の今まであの男に俺の行動を見られていた。
そう思うだけで虫唾が走る。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
俺は先生に拳を放つも、簡単に受け止められる。
「おい、おい、そんなにキレないでくれよ」
「これがキレずにいられるか! 散々人の夢を覗き込んで陰で笑っていたのだろうが!」
「まぁ、否定はしないよ。お陰でサンプルを得ることができた。キーファぽい演出をしたときの君の慌てようには、さすがに笑いが込み上がってくるのを必死に抑えていた」
「ぶっ倒す!」
感情的になった俺は勢いよく蹴りを入れようとするも、膝を押さえられてそれ以上上げることができなかった。
おかしい。いくら何でも俺の行動が読まれ過ぎている。
「君の攻撃は俺には通用しないよ。君の脳波をキャッチして思考を読んでいるからね。次にどのような行動に出るのかお見通しだ」
俺の攻撃は全て読まれているだと。そんなバカな!
先生が手を離した隙に俺は後方に飛んで距離を空ける。
考えろ、思考を読まれたとしても何か必ず方法があるはずだ。
絶対に一発ぶん殴ってやる。
「できるといいね。でも、逆に楽しみだよ。君が予想外のことをすればするほど、いいデータが取れるだろうからね」
いちいち俺の思考に対して返事をするなよ。
「ごめんね……あ、返事をしてはいけなかったんだ」
こいつ絶対にわざとだろう。
「あ、バレた?」
もういい、この際何を言われたとしても完全に無視だ。
「ウォーターポンプ!」
俺は瞬時にイメージを膨らませて、水圧の高い魔法を放つ。
「では、こちらはこんなのでどうだ? ファイヤーボール!」
水の魔法を放った直後、先生は目の前に火球を生み出した。しかし、その大きさは通常の火球よりも数倍も大きい。
俺の水が火球に触れた瞬間、物凄い勢いで水蒸気が周囲に舞う。
俺の魔法が消えるが、やつの火球は消えることなく残り続けた。
水が炎に掻き消された!
「そんな顔をしないでくれよ。燃えている物体の発熱量が、水の冷却効果を上回っていたのなら、水のみが蒸発し、炎は消えることなく残り続けることができる。だから、俺の火球は消えないと言うわけだ。蒸発は小学生の理科で習うだろう?」
チッ、俺の魔法が消されるとは。やっぱり俺の思考を読み取って、俺の魔法の威力より高い出力を出されているわけか。
悔しいが、俺の思考を読まれている以上は、俺はこの男には勝てない。
「ほら、もうこんな抵抗はやめていい加減に目覚めたまえ。お互いに時間のムダじゃ……グハッ!」
突然血を吐き、跪く先生を見て、俺は口角を上げる。
「ば、バカな! 一瞬思考が読めなかった」
「よし、上手くいくかは賭けだったが、成功してくれた」
「いったい何が起きたと言うんだ」
信じられないものを見るかのように、先生はキッと俺を睨み付ける。
「教えたところで対処することは不可能だからな。教えてやる。先生が教えてくれたじゃないか。この世界が俺の明晰夢でできているってことを。この世界は俺の願望であると。つまり、俺はこの世界をコントロールすることができる」
俺は頭の中で氷柱を思い描く。
「アイシクル」
魔法を発動すると目の前に巨大な氷柱が現れ、男を襲う。
「そんな攻撃、当たらなければ意味がない!」
先生は回避行動に出るが、それを見て俺は口角を上げた。
彼は避けるが、その先は地面に魔法陣が展開されてある。それを踏んだ瞬間、無数の獲物が飛び出して先生を攻撃した。
「グハッ!」
キーファの体が血だらけとなり、地面を赤く染める。
「そんな……バカな。どうして体が動かなかった」
どうやら魔法陣を踏んだ瞬間にまた避けようとしたみたいだな。
「だから言ったじゃないか。この世界の所有権は俺にあるって。俺が先生の動きを夢の世界で操作したんだ。いくら思考を読まれても、身体を支配されれば意味がないからな」
「くっ、まさか君がここまで自分の夢の世界をコントロールするなんて」
「さぁ、終わらせようか。どうせ俺の夢に潜り込んでいるだけだ。ここで倒されても、現実の世界では普通に生きているだろうよ」
俺は頭の中でイメージすると一つの剣が現れる。
記念追放で最強の聖剣だ。この夢物語を終わらせるにはうってつけの代物だろう。
「行くぜ! エクスカリバーン!」
俺は剣を振ると光の刃が先生を襲う。
「はは、まさかこの私が夢の世界で負けるとは思わなかった。君の勝ちだ。だけど、これで君の実験を強制終了させることができる」
聖剣に斬られた先生は、キーファの顔でニヤリと笑みを浮かべる。
そしてそのまま地面に倒れると、キーファの体は光に包まれて消えた。
あーあ、これで俺の望んだ夢から覚めてしまうのか。まぁ、色々とあって大変だったけど、楽しかった。
「アスラン!」
「お兄様!」
一人で感傷に浸っていると、俺のところにカリンと、セリアがやってくる。
俺は原作の内容が気に入らなかった。いくらヘイト稼ぎのためとは言え、アスランがセリアに暴言を吐くのは許せなかった。だから俺は彼女を守るために、ざまぁを回避したけど、もしもの世界ではこんな風になるんだな。
「ありがとう。二人とも楽しかった」
俺の言っていることがわからないのか、二人は首を傾げる。
「お兄様の身体が光っています」
どうやら先生が実験を強制終了させたみたいだな。これで俺は長い夢から覚めて現実に引き戻される。
「じゃな! また機会があれば夢の世界で会おう!」
二人に最後の言葉を告げると、俺は意識を失う。
「どうやら目が覚めたようだな」
俺はイスから立ち上がると周囲を見る。
どうやら先生は俺が目を覚ます前に逃げたようだな。
俺は何気にスマホを操作してウェブ小説サイトを開く。そこには記念追放の更新がされていた。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
異世界ファンタジーと思ったら現代ファンタジーだったと言うオチです。
ここまで読んで下さったあなたには本当に感謝しております。ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました。
あなたに読んでいただけて本当によかったです。
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