第二章 第六話 お兄ちゃんパワーを舐めるんじゃない!
俺は巨大な氷柱を生み出してライトニングロウの肉体を突き刺した。
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァオオオオオオオオオオオン!』
肉体を貫かれた魔物は、断末魔の悲鳴を上げると動かなくなった。
よし、どうにかライトニングロウは倒した。あとはセリアの様子を伺いに行くだけだ。
俊足魔法の効果は切れている。もう一度イメージし直す必要があるな。
脳内で足の収縮速度が速くなるイメージを膨らませ、俺は呪文を唱えた。
「スピードスター!」
呪文を唱えた瞬間、俺の走る速さは車並みになる。数秒で皆んなのところに戻り、セリアを見た。
「セリア!」
「お兄様! 無事だったのですね。よかった」
「セリア、お前やっぱり魔力が暴走しているじゃないか」
「ごめんなさい」
セリアは杖に嵌められてある星形の石に魔力を送り、魔法を発動させる。
しかし、彼女は無意識に膨大な魔力を送り続けた。その結果杖に貯めておける魔力量を超え、限界に達している。
「セリア、杖に魔力を送るのを今すぐ止めろ!」
「お兄様、ごめんなさい。さっきからやろうとしているのだけど、勝手に魔力が杖に注がれているの」
魔力の暴走か。こうなってしまったら、セリアの魔力が空になるのを待つしかない。
だけど、先に杖に溜まっている魔力を消費しないと限界を超えて大爆発を起こしてしまう。
こうなったらやるしかない。セリアを守ってやれるのは義兄である俺だけだ!
セリアに近付き、彼女の杖を握る。
魔力の暴走を食い止めるには、直接魔法石に触れて魔力を俺の中に流し込んむしかない。
星の形をした魔法石を掴んだ瞬間、一気に熱が伝わってくる。
あっつ! なんて熱さだ。握っただけで瞬時に火傷してしまった。
「お兄様止めて! お兄様の身体が魔力に犯されてしまう!」
「大丈夫だ。これくらいお兄ちゃんパワーでどうにでもなる」
さぁ、溜め込んでいたものを俺たちの中にぶちまけろ!
魔法石を通して俺の身体に魔力が流れ込んでくる。
「ブハッ!」
「お兄様!」
膨大な魔力に身体が耐えきれなかったようだな。だけどこれも計算の内だ。
頭の中でイメージを膨らませる。身体の細胞が活性化され、細胞分裂により俺の体内の傷を修復する。
「ネイチャーヒーリング」
呪文を唱えた瞬間、俺の口から流れ出た血が止まった。
どうにか回復はできたが、応急処置程度でしかない。魔力を吸い上げる度に俺の身体はダメージを受ける。
回復を繰り返していたちごっこにするのは難しいだろうな。俺の体力が尽きるのが先のような気がする。
この状況を乗り越えるには、俺の中に溜まった魔力を複数の魔法で発散させるしか方法はない。
複数同時の脳内イメージは初めてだが、ここでやらなければ俺たちは終わりだ。
何より俺を兄として慕ってくれているセリアの泣き顔なんて見たくない。
できるかどうかではなく、やるんだ! 行動に移さない限り、未来を変えることなんてできない!
絶対にざまぁなんてさせないからな! お兄ちゃんパワーを舐めるんじゃねええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
心の中で叫びながら、俺は一度に複数のイメージを膨らませる。
身体中の細胞を活発化させて体内の傷を修復しつつ、上空に強大なプチ太陽を配置してそれを光の壁で覆う。
「ネイチャーヒーリング! デスボール! ライトウォール!」
俺の傷付いた肉体が修復され、上空に強大な火球が現れる。そしてその炎の塊を光の壁で覆う。
予想通り、合成魔法はかなりの魔力を消費するようだな。お陰で杖の中の魔力をからにすることができた。
「セリアちゃん!」
セリアが倒れてカリンが駆け寄る。
「魔力の枯渇で気を失っているだけだ。魔力が戻れば目を覚ます」
セリアは大丈夫だということをカリンに教える。
「今から上空に大爆発を起こす! 俺が防御魔法で被害を食い止めるから安心しろ」
頭の中で二つのイメージを浮かべる。
一つは光の壁に包まれた炎が消え、光の壁が消えたと同時に大爆発が発生する。
そしてもう一つは爆風を防ぐために、俺たちと街に光の壁が覆うイメージだ。
「ライトウォール! 合成魔法、バッグドラフト!」
新たに発生した光の壁が俺たちを覆う。そして上空にある光の壁が消えた瞬間、上空に大爆発が発生して爆風が大地にまで届く。
崖の一部が砕けて俺たちに飛んでくるが、それらは光の壁に阻まれた。
体感で一分ほどだろうか。爆風は治まり、俺は光の壁を解除した。
穏やかな風が吹き、それがまた心地いい。
「終わったのか?」
「そうだよな! 立っている魔物もいないし、俺たちは町を守った」
「よっしゃー! 生き残ったぞ!」
冒険者たちは生き残ったことを喜び、中には互いに抱き付いている者もいた。
「カリン、セリアの様子はどうだ?」
「今、穏やかに寝息を立てていますわ」
カリンに膝枕をされているセリアはとても気持ちよさそうに眠っている。
「おい、アスラン!」
俺を呼ぶ声が聞こえ、声が聞こえた方を見る。冒険者たちが俺のところに集まってきた。
そして一人が俺の肩に手を置く。彼はギラギラとした目つきで俺を見ていた。
「約束どおり、生き残ってやったぞ。なら、今度はお前が約束を守る番だ。ちゃんと残りの五十万ギルを払ってもらうぜ」
こいつらの目つきヤバイな。こいつはちゃんと残りの五十万ギルを支払わないと、俺はこいつらにざまぁされるかもしれない。
「分かった。分かった。今回倒した魔物の素材を売り払って金に換えるから、それまで待ってくれ。さすがに先日二千五百万ギルを支払ったから、懐が寂しいんだよ」
「たく、しょうがないな、ならさっさと素材を売り払って金を用意しておけよ。楽しみにしているからな」
そう言い残すと、冒険者たちは街の方に戻っていく。
さてと、それじゃ魔物から素材を剥ぎ取るとしますか。
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