第二章 第三話 呪いの契約
「おい、いつまで待たせるんだよ。約束の時間はとっくに過ぎているじゃないか!」
「待ってくれ! あと五分! あと五分だけ待ってくれ」
「そんなに待っていられるか! 俺は帰らせてもらう」
あー、やっぱり時間過ぎていたか。まぁ、予定外のことが連続で起きてしまったから、こうなってしまうのも仕方がないよな。
「待たせたな! 約束の前金を持って来たぞ!」
俺は今にも帰ろうとしている冒険者たちの後ろから声をかける。
「おまえはアスラン! いつの間にギルドにいたんだ」
「たった今だ。転移して直接ここに来た。そんなことよりも金が欲しいやつは一列に並べ! 今から前金を配るぞ」
一列に並ぶように言うと、帰りかけていた冒険者たちは我先にと並び始める。
「まさか本当に前金を用意してくるとはな。たいしたやつだぜ」
「前金はやったんだ。しっかり働いてもらうぞ」
「分かっているって。俺を信用しろ」
一番前に並んだ冒険者に、五十万ギルを手渡す。
冒険者の一人が金を受け取ったタイミングで、彼の手の甲に紋様が浮かんでいるのを確認する。
よし、しっかりと契約がされているな。
金だけ受け取って討伐には参加しない冒険者もいるはず。その対策として、俺は冒険者全員に呪いの契約による刻印を植え付けた。
もし約束を破れば、その人物は確実に死ぬと言うものだ。
俺のざまぁを回避するために、誰一人として逃がさない。
「これで全員に行き渡ったな。みんなに金以外にもプレゼントを送った。お前たちの右腕の甲を見て見ろ」
手の甲を見るように言うと冒険者たちは自身の右手を見る。
「おい、なんだよこの紋様は!」
「これって呪いの契約って言うやつじゃないのか!」
みんな驚いているな。まぁ、俺があいつらなら、同じ反応をしているだろう。
「気付いているやつもいるようだが、一応説明しよう。お前たちの手に現れたのは呪いの契約による刻印だ。もし、金だけ受け取って逃げるようなやつがいれば、契約破棄とみなされ、呪いが発動して最後は死に至る」
「ふざけるな!」
「俺たちを信用していないってのかよ!」
自分たちがどのような状況にあるのか理解した冒険者の一部が、俺に暴言を吐く。
だけどこれも予想できている。
「ああ、俺はお前たちを信用していない。信用しているのなら、最初から呪いの契約なんてしていないからな」
俺の言葉に、金を受け取った者たちは動揺する。
「呪いの解除方法は簡単だ。魔物の集団がこの町に来たときに一緒になって戦い、勝利して俺から残りの五十万ギルを受け取ることで、契約は解除される」
「マジかよ」
「どっちにしろ、生き残らない限りは未来がないってことじゃないか」
冒険者たちは膝から崩れ落ち、愕然とした。
悪いな。こっちは二千五百万ギルも支払っているんだ。大金を払った分は、しっかりと働いてもらわないと。
俺はカリンとセリアを見て、言葉を漏らす。
「俺がしていることは悪だと思うか?」
「いいえ、アスランはしっかりとお金を払いましたもの。お金が発生した以上は、ちゃんとしたビジネスですわ」
「私もカリンさんと同じです。お兄様は今できることを精一杯しているだけです」
「ありがとう。二人がそう思ってくれているだけも助かる」
俺だってみんなが文句なく平和に解決できるのなら、その方法を選ぶさ。でも、他にいいアイディアが思い付かなかったのだからしょうがない。
「ギルドマスター、奥の会議室に向かおう。今から作戦を考える」
「お、おう」
ギルドマスターに声をかけ、奥の会議室に向けて歩く。
「とりあえずは、これでギルドマスターも安心だな」
「ああ、だけど大丈夫なのか? 少し乱暴な気がするが」
「確かに少し乱暴であったことは認める。だけど戦力を確実に保つには、この方法が一番なんだ」
他にもあるのかもしれないけど、その方法をなぜか考えたくない。
これはもしかしたら追放サイドであり、本来はざまぁされる立場が影響しているのかもしれない。
「ギルドマスター、この町周辺の地図は持っているか?」
「ああ、ちょっと待ってくれ」
ギルドマスターは会議室にある棚の引き出しを開け、丸められた紙を持ってきた。
「これでいいか?」
テーブルの上に紙が置かれ、覗き込む。
原作の描写にあったとおりだな。これなら、魔物のルートも説明がしやすい。
「ギルドマスター、魔物たちのルートはこうだ」
テーブルの上に置かれた地図に指を乗せ、口頭で説明を始める。
「魔物の大群は、この町の先にある荒野を通ってやってくる。そしてそこに罠をはる」
「罠だと?」
「街に向かうには、二つの崖に挟まれた道を通らないといけないからな。そこを封鎖することができれば、魔物の侵入を防ぐことができる」
「でも、その道は幅が広いですわよ。大体五十メートルはあるのではないかしら?」
「それは問題ない。俺とセリア、そしてカリンの力があれば上手く行く」
「任せてください。お兄様のご期待に応えて見せます」
「それで、具体的にはどんな罠を仕掛けるんだ?」
「古典的だが、落とし穴だ」
「落とし……穴? いやいや、いくらなんでも五十メートルの幅もある落とし穴を作るなんて不可能だ。そんなものを作っている間に魔物たちが来てしまう」
ギルドマスターのやつ、俺の作戦に否定的だな。まぁ、現実的ではないと思われてもしょうがない。だけどこれが一番の安全策だ。原作でも、キーファがやっていたことだ。なら、俺だってできるはず。
「大丈夫だ。俺に任せろ」
この作戦なら、三百体の魔物を足止めした上で狙い撃ちすることができる。
さすがに相手が三百体を超えたり、飛行型の魔物が現れたりしたら、瞬時に別の方法を考えないといけないがな。
「とにかく、三百体の魔物がこの街に来るのは明日だ。早朝、準備に取りかかろう」
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