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第二章 第一話 地方では売れないので王都に行きます

 古びた屋敷から出た俺たちは、早速町に戻ってアイテム屋で幻覚の杖を買い取ってもらうことにした。


「すみませんアイテムの買取をお願いしたいのですが」


「分かりました。どちらでしょう?」


「これをお願いします」


 握っていた杖をカウンターの上に起き、店員さんに見せる。


「こ、これはまさか!」


 幻覚杖を見た店員さんは一瞬驚くも、杖を持って店の奥に向かった。


「お兄様、ちゃんと査定してくれるのでしょうか?」


「多分大丈夫だろう。相場は俺が知っている。もし、足元を見ようとしたら売らなければいいだけだ」


 受付にいた店員さんが戻ってくると、杖をカウンターに置いて頭を下げた。


「すみません、当店では買取できません」


「買取ができないとはどう言うことですの?」


「こちらの品を鑑定したのですが、本物でした。買取価格は三千万ギルとなります」


 なんだって! 原作よりも五百万も高い金額がついたじゃないか!


 だけど、これで買い取ってくれない理由については理解した。


 この店には三千万も出す資金がないのだ。そう言えば、原作では店員さんがホッとしたような表情で、現金を渡す描写があったな。


「こちらが鑑定書になります。こちらを王都にあるアイテムショップに提出していただければ、この金額で買い取ってくれます」


 王都か。普通に向かうなら数日はかかるぞ。冒険者に前金を払うのには間に合わない。どうしたものか?


「あのう、お急ぎでしたらこちらを使われるのはいかがでしょうか?」


 受付の人がカウンターの上にクリスタルを置く。


 これってまさか、物語の後半から登場する転移石じゃないのか。


「こちら最近入荷した転移石となります。こちらを使えば、一瞬で王都まで行くことができますが、どうしますか?」


「買います」


 即答すると、俺はカリンを見る。


「分かりました。おいくらですの?」


「大量入荷により特別価格で販売しております。往復分で一万ギルでどうでしょう?」


 安い! 原作では最低でも一つ一万ギルはするのに、半額だ!


「では、一万ギルお支払いいたしますね」


 カリンがトレーの上に一万ギル札を置くと、店員さんはそれを受け取る。


「使い方は分かりますか?」


「行きたい場所を頭の中でイメージして、クリスタルを翳すだけだろう?」


「それはお一人の場合です。複数人で移動する場合はクリスタルを持っている人に密着する必要かあります」


 マジかよ。そんな設定、原作にはなかったぞ。普通に一人が使ったら他のやつらも転移していた。


「そのような仕様になっているのでしたら仕方がありませんわね」


「うん、仕方がない。これは不可抗力」


「おい、セリア! 俺の背中に飛び移るな! カリンもそれは少し密着し過ぎなんじゃないのか!」


「そうは言われましても、こうしないと転移できませんもの」


「そう、お兄様はクリスタルを持って、町のイメージをすることに集中してくれればいいのです」


 そうは言っても、背中と腕に柔らかい感触が伝わって、集中できないのだけど! やっぱり色々と原作とは違うのは俺のせいなのか!


 ええい、集中だ集中、全集中!


 なるべく煩悩を振り払い、俺は頭の中で王都のイメージを描く。


「光が、わたくしたちを包んでいる」


「転移が始まるようですね」


 俺は目を瞑って何も分からないが、どうやら原作と同じことが起きているようだ。


「アスラン、アスラン!」


「お兄様、王都に着きました」


 移動が完了したことを二人が伝えると、閉じていた瞼を開く。


 さっきまでアイテムショップの店にいたのに、俺の視界に広がる風景は、王都に住む住民たちが道を歩いている光景に変わっていた。


 本当に一瞬で王都まで移動したんだな。ファンタジー世界のみ可能である、空間を歪めての移動を体験するとは思わなかった。


「お兄様、早くアイテムショップに向かいましょう」


「ああ、でもその前に俺から降りてくれないか? セリア」


「どうせ帰りも引っ付かないといけないのです。だから私はこのまま降りません」


 確かにそうだけど、背中に引っ付いたままだと動きにくいんだよな。


 あれ? そういえば、別に売却するだけならカリンたちが付いてくる必要はないんじゃないのか?


 今更気付いても時既に遅いか。


「とにかくセリアは降りてくれ。転移するときだけは引っ付いていいから」


「分かりました」


 やっと降りてくれたか。早くアイテムショップを探さないとな。


 王都に来たのは初めてだ。当然マップが頭の中で完成していない。


 原作でもどこに何があるのか描写されていなかったからな。時間もあまりないことだし、住民に話しかけて場所を教えてもらうとするか。


「すみません、アイテムショップの場所を教えて欲しいのですが知っていますか?」


 俺は目の前を通った女性に声をかける。


「あら、なかなかいい男ね。アイテムショップの場所を知りたいの? なら私が連れて行ってあげる」


 お、これはラッキーだ。わざわざ道案内をしてくれるなんて。


 そう思った瞬間、女性は俺の手を握る。


 どうして道案内だけで、俺の手を握る必要がある?


「あのう、これはいったい?」


「それじゃあ行きましょう?」


 俺の質問を無視して女性は歩き出そうとする。その時、カリンが俺の腕を掴んだ。


「すみません。わたくしの婚約者をどこに連れて行こうとしているのでしょうか?」


「チッ、婚約者持ちかよ。せっかくいい男を見つけたから、いいことをしてあげようと思ったのに。はいはい、アイテムショップよね。この道を真直ぐに行って、突き当たりを右に曲がればあるわよ。今度からはちゃんと首輪をつけておきなさい」


 カリンが声をかけたら、突然女性が不機嫌になってどっかに歩いて行ったな。まぁ、アイテムショップの場所を教えてもらえたから、結果オーライということにするか。


「やっぱりアスランからは手を離すことはできません。変な虫が来ないように、私が引っ付いておきます」


「そうです。お兄様に触れていい女は、私が認めたカリンさんだけです」


「おい、突然また引っ付くなよ。歩きにくいじゃないか」


「ダメです。アスランを野放しにしていたら、危険だとわかりましたので」


「なんでダメなんだよ」


 俺はカリンとセリアに抱きつかれ、身動きが取りづらい状況の中、教えてもらった道を歩くのであった。


 最後まで読んでいただきありがとうございます。


 この物語が面白いと思ってくださった神様のような方へ


『面白かった!』


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『今後の展開が気になる! 次はいつ更新されるの?』


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