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彼女は脳にティアマトを抱えている  作者: XI
二十四.お目覚め?
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二十四ノ01

 土曜日だ。店内に入ってくると千鶴は挨拶もそこそこに、駒みたいにくるりと回転したのである。短いスカートがふわりと広がったのである。胸はぺちゃんこで、脚も肉感的だとは到底、言えない。それでも、なぜだろう、とても素敵で、またとてもイヤラシイように映った。


 私は茶の間の端に腰掛け、店舗に投げ出した脚を組んでいるわけだが、千鶴にしっかりとした目線を寄越すために文庫本を脇に置き、「なんだ、千鶴、その恰好は?」と訊ねた次第である。


「両親が心配するのです。だから、鏡花さんのまえでしか着ることはできないのです」

「そう言って出てきたということか?」

「私は根暗な陰キャで間違いないのですけれど、背伸びくらいはしたいのです」千鶴がキラキラと目を輝かせた。「いかがですか? 鏡花さんの目から見て、それなりに見えますか?」

「見える」私は断言した。「脚をさすりたくなる。太ももを舐め上げたくなる。優秀な人材に育ったものだ」


 千鶴はさらに目をキラキラさせ。


「あうぅ、鏡花さん、もうわかりますよね? 私はその、あなたの魔法の中指で、その……」

「閉店までは二時間ほどだ。悶々としながら待っていろ。魔法を使ってやることについてはやぶさかでは――」


 すると表の引き戸が開き。入ってきたのはブルーのキャスケットに白シャツに茶色いサスペンダー姿のカイトであり。私は目を見開くくらいには驚いた。千鶴に至っては「どひゃぁっ!」と、くだらん言葉を発するほどにびっくりした。


 だって、あのカイトが、千鶴と同じような、露骨なミニスカートをはいているではないか。


 カイトがレジ台の向こうまで近づいてきた。


「な、なんだよ。千鶴もいるのかよ」

「いたらダメなのですか?」

「ダ、ダメだっ。こんなあられもない姿を、ほかの誰かに見られたくないっ」

「たしかにあられもない姿だな。電車のなかとか、ヤバかっただろう?」

「うぅぅっ、そうなんだよ、鏡花ぁ。みんなじろじろ見てくるんだよぉぉ」

「それはおまえ、おまえの白い脚がえらくエロく見えてしかたないから――」

「やめろぉ、ばかやろぉっ! そういうことを平然と言うなぁぁっ!」


 両手で顔を覆ってしまう、カイトである。


「いや、しかしだな、おまえのそんな脚を目にしてしまえば、男どもはその脚を好きなように扱いながらおまえの脚の付け根にモノを突っ込みたく――」

「だからやめろ鏡花あぁっ! 俺はそんなの嫌なんだぞぉぉっ!」


 ここで実に原始的な疑問が頭に浮かんだのである。

 否、最初から問おうと考えていた内容ではあるのだが。


 「カイトはどうしてミニスカートなんだ?」


 カイトは俯き、あらためて、顔を真っ赤に染めた。

 その顔も、やはり両手で覆ってしまうのである。


「あるいは電車のなかにおいても突っ込まれることも想定し――」

「だからアホかぁぁっ! そんなわけあるかぁっ!」

「だったら、どうしてミニスカなんだ?」

「そそっ、それは……」

「考えるに、おまえ、他の視線を得るということで、自らの魅力を探ろうとしたんだろう?」

「ちちっ、違う! 俺に限ってそんな――!」


 あっはっはと笑った、私である。


 「いいじゃないか。ミニスカ結構。千鶴は? どう思う?」


 千鶴はもはや膝を折っていて――。


 「うひゃぁっ!」


 そんな素っ頓狂な声を発した、カイトである。

 見ると千鶴はカイトの真っ白な脚に頬ずりをしているではないか。


 「うひゃぁ! うひゃぁっ!」


 カイトはばんざいをしたまま、阿保みたいに大声を上げる。


「ああ、なんとすべすべなのでしょうか。だいじょうぶですよ、カイト。私があなたを(まこと)の快楽へと導いてさしあげ――」

「それはやめろぉぉっ! 鏡花みたいなことを言うなぁぁっ!」

「だいじょうぶなのです。私もあとからイカセてもらえば、まさにWIN―WINの関係――」

「そんなところで勝ちたくねーっ。っていうか、あ、やんっ……っ」

「お、いろっぽい声が出ましたですね。やはり股間は弱いように設計されて――」

「だからやめろぉっ! 俺は俺なんだぞぉ!」

「俺は俺でも、身体は明らかに女性のそれではありませんか」


 すると、「うっ」と喉の奥を鳴らし、押し黙ったカイトである。


 「カイト、それに千鶴もだ。あまりじゃれ合うな。ミニスカートで表を出歩く、さらには電車にまで乗る、カイト、実際のところ、なにがあったんだ?」


 カイトは太ももをすり合わせながらもじもじすると、「俺だって女のコなんだ……っ」と返してきたのだった。


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