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彼女は脳にティアマトを抱えている  作者: XI
十二.宇宙人らしい
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十二ノ03

 カヨコに紹介したのは、近所の電気屋の跡取り息子だ。店はガスコンロからエアコンまで、なんでも揃っている。まさに街の電気店といった感じなのだ。修理等の売り上げで生活を成り立たせているのだろう。機器の修繕で利益を得ているのだろうということだ。


 電気屋の男はちゃぶ台を前にし、正座している、申し訳なさそうに。カヨコも同様だ。「二人とも、膝を崩せ」と言った次第だが、それでも緊張感、あるいは緊張そのものを解こうとはしない。私は麦茶を二人の前に出しつつ微笑んだ。思い描いていたとおりだ。二人とも、生真面目なのだ。いい若者たちではないか。


「ヒトシ」と私は声をかけた。「この女――カヨコは宇宙人らしいぞ?」

「そそ、そうなんですか?!」

「だったら、嫌うか?」

「い、いえ。そんなことは――」

「見たか、カヨコ、こいつは貧乏だが、とにかく誠実なんだよ」

「は、はい。それはスゴく伝わってきます」

「もういいな。形式的なお見合い的行事は終了とする。とっとと結婚してしまえ」


 電気屋ヒトシは「えっ」と声を上げ、宇宙人カヨコに至っては「きゅ、急すぎますっ」と言葉を並べた。対して私は、「結ばれるなら早いほうがいいぞ。子作りに励むにしたって、そのほうがいい」と主張した。

 

「で、ですから、鏡花さんっ」

「電気屋ヒトシ、おまえだって、もう若くないだろう? この女――カヨコは間違いなくイイ奴だ。きっと仲良くなれるぞ」

「でで、ですけど――」


 ヒトシがどぎまぎしたように――しながらも、カヨコの顔をちらちら見る。ずっとぽっと頬を染めているのがカヨコである。気に入った旨、あるいは捨て置けない旨、たがいに感じ取ったのだろう。


「あ、あの、えっと、カヨコ、さん……?」

「は、はい、なんですか?」

「まずはその、お付き合いからということで、いいでしょうか?」


 途端、カヨコは明るい顔をして。


「お願いします。私はあなたのこと、好きになれそうな気がしています」

「ほんとうに?」

「はいっ」

「て、照れくさいなあ」


 これでうまいことディレクションしてやったと言えるだろう。私は役に立ったというわけだ。やはり私は尊いのだ。


「ついでだ。カヨコに説いておいてやる」

「えっ、なんですか?」

「宇宙人とはいえ、見た目はニンゲンであり、そうである以上、いろいろとニンゲンに近いと考えられるわけだ。くり返すようでなんだが、ニンゲンは常に発情期にあるという稀有な生物だ。二人でも三人でも生めばいい。都度、私は祝福してやる」

「ひゃ、ひゃぁぁっ」

「あいまいな悲鳴を上げて事を濁すな。おまえたちに幸多からんことを」


 私は立ち上がり、茶の間から出て、進み、店の引き戸を開けた。二人もついてきて、その二人に辞去を促す。兄貴への報告が待っている。それはどうでもいいことだと思ったりもするのだが。


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