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彼女は脳にティアマトを抱えている  作者: XI
四十六.草野球――からの~
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四十六ノ01

 際どいプレーだった。一塁手が受けるのと打者走者が走り抜けるのと同じタイミングに見えたのである。結果、アウトだった。私が応援しているのは攻撃側のチームなので、つい舌打ちを漏らしてしまった。「からいな、審判は」と愚痴まで漏れた。


 頷きながら「いまのはきちんとアウトだと思うぜ」と言ったのはカイトであり、「私にはセーフに見えましたですよ」と反論したのは千鶴である。


 まあいい。

 いろんな見方があるだろう。


 楡矢が帰ってきた。楡矢は剣呑なPMCのニンゲンで事あるごとにソロモンに出張っていて宿敵みたいな奴と向き合っている危なっかしいニンゲンなのだが、こうして日曜日の草野球に顔を出すよう男なのだからじつのところは得体が知れない。


「うへぇ、うへぇぇぇ」となんとも悩ましげな声を発しつつ、楡矢はやってきた。「打てへんわぁ、あんなん。あのおっさん、もとはセミプロなんやろぉ?」

「知るか、馬鹿」私は上から目線でそんなふうにのたまってやる。「とにかく打てなかったおまえが悪い」

「えーっ、ほなら鏡花さんが打ってみぃさぁ」

「だから、やかましい」

「え、ええぇー……。あ、しかしやな、鏡花さん。このあと、すごく魅力的なイベントがやな――」

「イベント、それはなんだ?」

「ウチの若造が居酒屋でバイトしててやな、そこ、貸してくれるんやって」


 ああ、なるほどと合点がいった。


「わかった、行こう。ちょうどビールが飲みたかったところだ」

「さすが鏡花さん、ノリがいいーっ。千鶴とカイトは? どないする?」


 カイトが「えっ」と声を上げた。「お、俺、ビールは飲めないぞ? っていうか、ビールは飲めないぞ?」


「なんで二回言うたんや?」

「大事なことだからだよ」

「千鶴は?」

「オレンジジュースが大好きなのですっ」

「どうやら千鶴のほうが利口なようやな」


 カイトは目を白黒させる。


「えっ、えっ? オレンジジュースなら俺も飲めるけど?」

「ほなら行こうや、カイトたん」

「たたたっ、たん!? カイトたん?!」


 私がその細い腰を抱いてやると、カイトは「うひゃぁっ!」と声を上げた。敏感すぎてかわいすぎて笑える。


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