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キラキラの向こうに  作者: 矢野あいこ
144/156

プロ野球選手との淡い恋144

鳥取は家に戻るなり、大きな花束を玄関で迎えてくれたパートナーに手渡した。

百合を基調にした花束は、凛とした鳥取によく似合う。

「何だか、こんな大きな花束を抱えて帰るって、恥ずかしいわね」

「そんなことはないよ。病院の皆さんの気持ちだ。素晴らしいじゃないか。お疲れ様でした」

男性は穏やかに声をかけた。


「今日は集まりが中止になったんでしたっけ」

「そうなんだ。光田くんに急な都合が出来てね。新年に変更だ」

「そう。それは残念ね。でも、そのおかげで、最終日を一緒に乾杯出来るなら、それもいいわね」

戸波は照れ臭さそうに微笑んだ。


光田が入院する前から、戸波と鳥取は顔見知りだった。

鳥取の勤務していた病院には名医と名高い外科の実弥医師がいる。

手がける選手たちに何度も付き添い、治療方針を話し合う中で親交を深めていた。


実弥の傍には、高い割合で鳥取が看護師としていた。

信頼を得ているのは間違いなかった。


きっかけは、はっきりしない。

光田が入院していた時に、鳥取がバツイチで独身であることを知った。

戸波はそれまで仕事が楽しく、忙しく、束縛されそうな結婚に興味はなかった。


けれど、たまたま話をするうちに、誰かと他愛ない話をするのもいいものだと思えた。

いつの間にか、二人は一緒に住み始め、戸波が経営している接骨院に鳥取は鞍替えすることになった。

運営は人に任せていたが、鳥取が力を貸してくれればこんなにありがたいことはなかった。


「そう言えば、さっき、以前病院で看護助手をしてた女の子に会ったの」

「それは偶然だね」

「あの子、光田さんが入院している時、ずいぶん気に入っていたって話があったのよ」

戸波は何も言わず、花束を花瓶に生けた。


反応が無いので、鳥取はそれ以上何も言わずに着替えに行く。

着替えて居間に戻った鳥取に、戸波は言った。

「今日会った、光田くんが気に入っていたと言う子は、どんな子だい?」

「どうしたんですか、急に」

「いや、なんとなく」

鳥取はそれ以上深く探ることはやめて、客観的に思い返してみた。

「真面目な子よ。時に抜けてるけど、そこがいいと思ってたの。でも、患者だった人からスカウトされて転職してしまったのよ」







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