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キラキラの向こうに  作者: 矢野あいこ
110/156

プロ野球選手との淡い恋110

始まった会は、バッティングホームの話から、精神論にいたるまで様々な話が熱を帯びている。

河原は田中の熱い野球論を聞きながら、ふと、ちょうど反対側の中心にいる光田の姿に目が止まった。


光田は田中と異なり、持論を熱く語ることはない。

後輩の話でも聞いてくれるタイプだし、相談されれば親身になって答えてくれるし、違うと思えば指摘もしてくれる。

優しい兄貴分だ。


田中の話に疲れると、逃げるように光田の元へ逃げるのが河原の通例になっている。

いつでも穏やかな光田だが、パワーとオーラがダダ漏れで、近くにいると不思議と元気になる。

河原にとって、プロ野球の世界に入り3年。

ずっと変わることのない、憧れだ。


その光田が、後輩に囲まれて、相槌を打ったり、笑ったりしていたが、何だか元気がない気がした。

何かあったのだろうか。

少し気になったが、田中の話が続いていて様子を見に行くことが出来ない。


河原は頃合いを見計らい「すいません、ちょっとお手洗いに行ってきます」と、何とか抜け出した。

手洗いから戻ったら、しらっと光田の方へ行ってみよう。


手洗いへ向かい廊下を歩いていくと、店の出入り方向のテーブル席に座る女性に目が止まった。

悲しそうに俯いていた。

泣いているのだろうか。

誰かいて、別れ話でもしているのだろうか。


女性がおもむろに顔を上げた。

河原はその顔を見て、どこかで見覚えがあると感じた。

「どこで会ったかな」

あっ。

河原は声が出そうになるのを堪えた。

そうだ、間違いない。

あの時の人だ。


ファン感謝祭の時、「俺の料理選手権」が終わり裏のテントに戻ると、谷岡がうなだれて壁にもたれていた。

「どうした?」

河原が声を掛けると、谷岡が周りをキョロキョロ見回した。

「ミラクルだよ、マジで」

そう言って谷岡の肩を抱くと、耳元で小さな声で呟いた。

「あの子、光田さんの女なんだって。知ってたか?」

「あの子?誰だよ。内田菜々?」

「違うんだよ。今、俺と料理してた子が、光田さんのなんだって」

河原は思い出した。

「え?何で分かったんだよ」

「言われたから」

「誰に?」

「光田さんに」

谷岡はまた頭を抱えた。


お土産のサインボールを受け取りに来たとき、河原はその女性をしっかり見たから間違いない。

河原は悲しそうな女性があの時の人だと確信し、目があった瞬間、慌てて頭を下げた。

彼女は不思議そうに、けれどこちらに頭を下げてくれた。


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