実父マルヴィルはヒエラルキーの底辺だった
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大きな、屋敷の門をくぐって私は歩き始めた。後ろからはロイジャが付いてくる。なんか、あひるの親子みたいだ。実際逆なわけだけど。(位置が)
このまま馬車で入って来てもいいんじゃないの?というくらい長くて広い道を綺麗な花、(なんかヒヤシンスみたいなやつとか)や噴水を眺めながら歩いていると、ごてごてした飾りは無いものの、年季の入った立派な扉が見えてきた。行くときは裏口から出たので表の扉を見るのは初めてだ。なかなかの迫力である。扉の近くへと着いて見上げるてみると、その凝った意匠がよく分かった。真ん中には馬に乗った、勇ましそうなダンディなおじさんが描かれており、その周りが炎に包まれている。これをだけだと、ただの戦の絵だ。ただ一つ謎なのは、ダンディなおじさんの手にペンが握られていることである。この強そうなおじさんにあまりにも似合っていなくて、猛烈な違和感がルミアを襲う。てか、あのペンぐらい、あのおじさんにかかったら潰れるんじゃないの?と思う。口から意図せずに言葉が漏れた。
「このおじさん誰..?なんでペン持ってるの?」
「ああ。あれは初代ヴィズダム家ご領主カリソン・ヴィズダム様です。遺言では、濃の絵は馬に乗っているものしか認めん!とおしゃられたらしく、そのあまりある知性でご活躍されたにも関わらず、馬に乗っていらっしゃいます。
彼の執事は渋ったそうですが、カリソン様の奥様、アリア・ヴィズダム様があのバカにはペンでも握らせておけ、とおっしゃったことで逆らえなくなり、結局このデザインになったそうです。また、炎はいつまでも栄え続けるようにという思いが込められているもので、泣きついた執事の案が採用されたもで、まさに執事の努力の結晶といえるべきものです。」
後ろからロイジャの丁寧な解説が聞こえる。やっぱ私の家系、変な人というか、ある意味凄い人ばっかだね。そんなあきれた視線を扉へと向ける私にロイジャが一言ぽつりと言った。
「ルミア様はご自分の事も規格外だと理解しておられるのでしょうか..。」
小さい声だったが前にいた私には聞こえている。確かにルミアちゃんは規格外だったけど私は別にそうではない。私はピアノを弾くこと以外は平凡である。ルミアちゃんの以前の行動を聞く限り説得力は皆無だと思うが、前世は普通の人間だった。という変なプライドのせいもあり少し反論しようと思ってロイジャのほうを向いた。私に見つめられたロイジャがあ、やべっやっちゃったっ、ていう顔になっている。
「あ、いえこれはね。はい。」
言い訳になっていない言い訳だ。
と、その時だった、ドドドドドドドドドという土の削れる工事現場のような音が聞こえてきたのは。驚いてそっちを向くとドアが開いて緑と黒で出来た弾丸のようなものが突っ込んでくる。後ろを見るとロイジャは遠くの方まで逃げていた。守ってくれるんじゃないの!?しかも、意外とはやいし。私も逃げるしかない、そう思って走ると..。
ナニコレ、超速いんですけど。景色がどんどん後方に流れていくよ。私は異例の速さで走っていた。どうなったのかはよく分からないが、ルミアちゃんのおかげ?これなら大丈夫だと思って後ろを見ると、弾丸はもう既に目の前まで迫っていた。おまけに逃げないでくれルミア、と叫んでいる。いや、怖ええんですけど…。
怖くてスピードアップするが弾丸もさらにスピードアップし、そこから手が伸びて肩をつかまれてしまう。幽霊か!またしても後ろを見ると、いつの間にかロイジャの姿は消えていた。ロイジャの裏切り者~!!!!!!!!
ロイジャへの怒りを感じつつ私はせめてもの抵抗にとダメもとで弾丸をけってみた。そうだ。本当にダメもとだった。
直後ブオンという風の音が聞こえて弾丸の勢いが止まる。弾丸は人の形へとなっていった。ムキムキの三十代ぐらいの男の人だ。顔はそれなりにイケメンだが、めんどくさそうな性格という印象を受ける。すると、どこからか出てきた裏切り者ロイジャが彼へとあきれたように溜息をついた。何処にいたの!ロイジャ!
「何やってるんですか。マルヴィル様。執務は終わったんですか。」
これが、実父マルヴィルか。笑えるほどにイメージと被りすぎている。あの、学校によくいる、挨拶うるさい系教師みたいな…。
「いや!まだだ!扉の辺りにたまたまルミアがいたのが見えたので、来てみたのである!」
ロイジャの言葉に実父マルヴィルは爽やかに返答した!いや、爽やかにいう事じゃないでしょ!ルミアちゃんがどうしてわずか四歳でパパン大嫌い症候群になったのかどうかが分かった。これはルミアちゃんの責任ではなく実父マルヴィルのせいだ。私も嫌だ。これはめんどくさい匂いがするし。実父マルヴィルの言葉に、ロイジャは同じく爽やかに返答した。
「そうなんですね。これはメフィル様にご報告が必要でしょうか。」
にっこりと笑いながら、脅すロイジャ。メフィル様にご報告という単語に実父マルヴィルは震えあがっている。実母メフィル、強いね。その他に、私はこのことでさらに切ないことを見つけてしまった。この家の勢力図は実父マルヴィル<ロイジャ<実母メフィル、ということだ。実父マルヴィル、強いようで弱いね。
先程のロイジャの言葉に未だ顔色の悪い実父マルヴィルは逃げ腰になっている。
「ろ、ろ、ロイジャ。すぐに戻るから、このことは内緒にしておいてくれ。じゃない。内緒にしておいてください。お願いします!」
そんなに怖いの実母メフィル。ロイジャに敬語になってるし。スキルの事で別に会うのはむしろ楽しみになっていたけれど、再びちょっと怖くなってきた。逆に怖いものみたさもあるけど。そう考えていると、前に、他の人の影が差した。後ろを振り返った実父マルヴィルの頬が引きつっている。
「い、や、これは..。」
「な、に、が内緒ですって。執務室にいると思ったらなんでここにいるのでしょうか?マルヴィル様。」
私も後ろを見ると、腰に手を当てた真っ赤な赤色の髪の毛に、緑の目をした女性がとてつもなく綺麗な笑顔と鋭い視線で実父マルヴィルの方を見ていたのであった。
メフィル怖えええ
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