メイドとの出会い
短めです。
二回目に目が覚めても状況は変わらないままだった。
しいて変わったというのならば、ただ目に映った最初の人物が執事のような人かメイドのような人かそれだけだ。多くの人は、いや男の人と女の人じゃ大違いじゃないか、というかもしれないが、死んだはずなのに見たこともないところにいるという記者が靴も履かずに飛び出してきそうな案件では些細な違いにしかならない。
ということでルミア・ヴィダドムただいま大変頭を痛めております。
といっても、一回目のような割れるような痛みというより胃痛も伴う系統の痛みです。
「は~」
溜息をつきながら、ルミアはついさっきのことを思い浮かべた。
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次に目が覚めた時ルミアの目に映ったのは、心配そうにこっちを見てくる二人のメイドのような人物だった。
オレンジ色の髪にガーネットのような瞳をもった明るく利発そうな女性は、目を開けた私を見た瞬間、
「ううっ、お嬢様がお目覚めになられて良かったです。」
とぽろぽろと涙を流しはじめた。
急な展開に戸惑った私を見た、茶髪にオニキスのような瞳をもったいかにも冷静そうな女性がさっきの女性へ、
「アンノ、お嬢様の御前ですよ。」
ところでアンノって誰!突っ込みたい衝動に駆られながらも、なんとかその言葉を耐えた。
アンノというらしい女性は茶髪女性の言葉に慌てて涙を拭き、背筋を伸ばした。
「ルミア様、見苦しいものをお見せしてしまって誠に申し訳ございません。
お加減はもう大丈夫でしょうか。」
見苦しい?そんなことはないけど…。むしろ可愛い。ガーネットの目は本当に宝石みたいでほんと可愛い。明るいオレンジの髪は彼女自身の性格を表しているようだ。可愛くて羨ましいなぁ〜。あ!返事してない。
「へ?はい。大丈夫ですよ」
へ?といったのでアウトかもしれないがきっと大丈夫だ、大丈夫だと思いたい。
だが、わたしが発した言葉を聞いた茶髪女性は眉をピクリと動かした。と思ったらまた同じ位置に収まる。こちらを見つめる無表情な顔が怖い。何か感づかれたかと背中を冷汗が流れる。茶髪女性が話し始めた。
「ルミア様?いいよなどというはしたない言葉使うべきではございません。一介のメイドでしかない私、ミモラやアンノとは違い、ルミア様はカルニア帝国三大貴族の一つである、ヴィズダム家の跡取りではございませんか。もう少しで社交の勉強も始まりますし、淑女としての自覚を持って下さいませ。混沌とした貴族社会では命取りになりますよ。」
カルニア帝国、どこだそれ。淑女…五歳なんですけど。
っていうか本当にメイドなのか。そしてこの女性はミモラというのか。
というかミモラよ。その三大貴族の一つであり、ヴィズダム家跡取りである私に説教するのは良いのかい!
「それが私の職務というものですから。」
心読めるのかよ!あと真面目か!
「私は心が読めるわけではございません。こういうものはキャリアでございますので。」
つまり、そうなるような経験を積んだってことだな。
この国、ここの貴族社会、こわい。平和な日本が恋しいわ。
「あの…。ミモラ先輩。もうそろそろ戻らなくていいんですか。他のメイドたちも、ルミアが目覚めたことを聞きたいでしょうし、ルミア様も休息をとる必要があるので…。」
アンノの言葉にはっと我に返るが、次第にアンノが天使に見えてきた。天使どころでない。女神だ。後光が差してみえる。これ以上ミモラの傍にいれば、何かぼろが出そうで怖い。今日はお帰り願いところだ。
「そうですね…。病み上がりですし。」
ほっ。これでミモラから逃れられる。
じっ。ミモラ、そんなに見ないでください。怖い…。
私をしばらく見た後、ミモラ(とアンノ)は去っていった。
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ということがあったわけです。
二人が去っていった部屋の中、私はベッドの上でうなだれてしまう。ミモラに隠し通せる気がしない。ただバレたらバレたでやばい気がする。ミモラが無表情で包丁を握る姿が目に浮かんだ。超怖いけど似合っている。今から、頭が痛い。
読んでくださり、ありがとうございます。