プロローグ
世界的有名ピアニストがテロに巻き込まれて転生したのは、異世界の高位貴族だった。手に入れたスキルを駆使しながら、学園と異世界ライフを満喫していく。
※小説投稿は初めてなので、拙いところもあるかもしれませんがよろしくお願いします。
杉野 琴音は超有名ピアニストだ。ある日は遊園地でピアノを弾き、ある日は偉いらしい(よく知らないけど)金持ちの人の前でピアノを弾く。そのせいでいつも、目が痛い。
光が反射していつも目に攻撃しているのだ。また、金持ちの人になんか言われても分からないのでテキトーに相槌を打つ。周囲からは真面目だ、何を話しても楽しく聞いてくれると言われるけど、多分向こうの気のせいだと思う。
生まれた時から絶対音感だったので、その才能を見込んだ近所のピアノの先生が商売に失敗してお金がなく途方に暮れていた私の家の借金を払いピアノで恩返ししてとピアノを教えてくれたのだ。
助けてくれた先生は私の憧れとなり、少しでも近づけるようにと頑張った。その結果がこれだ。めきめきと腕を上げていき世界的に名を馳せていった。自分で言うことじゃないだろうけど。
「あー。疲れたな。何か屋台で美味しいものでも買おうかな。」
琴音は欠伸を嚙み殺しながら、ピアノを弾くために来ていたお祭りの中を一仕事終えた達成感を胸に歩いていた。
すると突如お腹からグウーという音がなった。周りの視線が全てこっちに向けられる。
「そういえば、お昼ご飯食べてない…。」
思い出しそう呟く。
「そーなの?ねーちゃん昼飯食べてないの?僕のあげる!」
その途端、男の子がてくてくと歩いてきて、唐揚げを差し出してくれた、ありがたいが恥ずかしい。
お礼を言って一つもらうと少しお腹の虫も治ってきた。もともと少食だったのが功を奏したようだ。男の子にもう一度お礼を言って歩き出す。
今日は準備に忙しくお昼は抜きだったのだ。少しブラックである。何か美味しそうなものはないかとうろうろしているとふと、屋台の光を集め、赤い月のように輝くりんご飴が目に入った。それを買って食べた後、隣に売っていたお好み焼きも買って口に頬張る。(少食じゃないかも…)
「んー。おいひい~~。」
先に食べたりんご飴は甘くて、体の疲れをほぐしてくれる。今、食べているお好み焼きは七味がかけられてているため、少しだけ辛く、咀嚼すると野菜のうまみとシャキシャキとしたキャベツの食感がダイレクトに伝わってくる。また、香ばしい肉の香りが幸せな時間を届けてくれる。
甘いものを食べた後に食べる辛いものは、やはり最強だと笑みを浮かべながらモグモグと食べていると、ピアノを喜んで聞いてくれていた子供たちの顔が思い浮かんで来た。そんなことは今日だけではない。今まで沢山の人にピアノを聴かせてきた。地震の被災地に、老人ホームに、ボランティアでもいろんなところへ行っていたのだ。私のピアノを聴くとみんなが感動してくれる。希望ができたよ本当にありがとう、そんな声を聞くと、明日も頑張ろうと思えるのだ。やっぱりピアノは魔法だ。琴音は幸せを噛み締めていた。親が商売に失敗した時は本当にどうなることかと思ったけど今自分は幸せだ。今日も良い日だなとそう思った次の瞬間、穏やかな時間を引き裂くように
「逃げろ!テロ集団がいるぞ!]
という男の人の大きな声と共に、逃げる人の沢山の足音と爆発の音が聞こえてきた。自分も走って逃げるけれど、その音は小さくなるわけではなく、だんだんと近づいて来る。後ろで起こる爆発の音は、まるで死ぬまでのカウントダウンのようで不気味にしか聞こえない。再び爆発の音が鳴る。丁度10回目の爆発の音がなったんだな、と頭で軽く認識するより先に辺り一面が光に包まれ、気付けば目の前が赤く染まっていた。
驚いて顔を触ると、血がべっとりと付着する。直後、とてつもない痛みを感じたが、出血している部分も麻痺していくのか痛みも少しずつ減っていった。普段感じない、死ぬことへの恐怖が頭を埋め尽くし体がブルブルと震え始める。
「ああ。私このまま死んでしまうのかな…。」
せっかくピアノも教えてもらって、やっと有名になって、先生に2倍の恩返し、いや3倍の恩返しが出来ると思ったのに…。
悔しい…。悔しい...。悔しいとても…。
最後に考えたことは途方に暮れていた私たちを助けてくれた時の先生の温かい顔と、ピアノを弾いた時に目を輝かせて聞き入ってくれていた子供たちの顔だった。
意識はゆっくりと闇の中に吸い込まれていく。地面に倒れ込み、眠るように琴音は死んだ。周りにはまさに地獄とも呼べる光景が広がっていた。生きている人は誰もいない。だから、気づかない。琴音の体が不自然に光ったことに。
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「……ア様」「…ミア様」「ルミア様」
ゆっくり浮上していく意識の中でぼんやり目を開けると、焦った顔をしていた男性がほっとした顔をしたのが分かった。それと同時に、頭部がずきんとした痛みを訴え始める。
思わず顔をしかめると、ほっとした顔へとなっていた男性が再び青白く焦った顔になりオロオロとた。
感情の起伏が激しく、見ていて飽きない男性をボッーっと眺めていると男性はっとした顔をして顔を引き締め、
「怪我をしていらっしゃるのですから、私に構わずお休みになってください。」
と丁寧な言葉遣いで、私へと声をかけた。
私は、見られていたら休みにくいな…と思いつつも、引き締めた顔が涙目へと変わっていく男性がなんだか可哀想で意図せずに
「はい」
という言葉が出たが、ふと首をかしげた。ちょっとずつ思考が明確になっていく。ん?ちょっと待てよ。私はテロ集団に殺されたはずだ。到底、生き延びることの出来なさそうな傷だったが、死んでいないのならここは病院か?
目の前の男性は看護師ではないだろう。なら、医者か?それも違うような気がする。
男性の来ている服は、白衣どころか普通の服でもない執事服のようなものだった。そう。まるで他の世界の物語に出てくるような…。
「え?」
驚いて出た声が高い声だったことにもさらに驚く。
驚きで固まってしまった私に
「ルミア様?」
訝しげに男性が顔を覗き込んでくるけれど、そんなことはもう気にならなくなっていた。
ルミア様?それ誰?私は琴音じゃないの?
不可解な出来事の連続に頭が全くついていけてない。ここはどこなの!?
考えすぎたのか、キャパオーバーしたケータイのようにルミア(琴音)は気絶した。男性の叫び声が部屋中に響きわたる。外にとまっていた鳥が迷惑そうに目を細め、飛んでいった。
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