発狂
「紗希さん、なんか楽しくなさそうだけど、どうしたの?」とニナが聞く。
「え?あぁ、凌さんから言われたことをね…。いまでも凌さんは神宮寺家を嫌っているんだなと。」と答えた。
「あぁ、確かに私もショックを受けたけど、別に仕方ないかなって思ったなぁ…」とニナが優しげに答える。
「仕方ない、ですって!?私たちはハメられたのよ!鎌崎の人間に!凌さんは関係ないけど、羽根見沢の方の鎌崎の人間によってね!」と声を荒らげる。
「羽根見沢って、吉木館の隣の村だよね。そこに鎌崎の人が住んでるってことか?」と聞いてみた。
「そうよ、鎌崎家は元々、羽根見沢が鬼瓦村と呼ばれていた時。つまり、幕末の時代に吉宮に来たのよ。それでいつの頃か私たちを排除して、寺田家を入れた。別にそのことはいいのよ。ただ、その理由が気に食わないだけ。」と言った。
「理由?理由って、吉宮市街地計画に反対したからって奴だろ?」と勝が聞く。
「それは表向きの理由、本当の理由は羽根見沢の鎌崎家の人間が私の曽祖父に当たる、当時の当主に広尾神社にて呪いを行うことを唆したのよ。そのせいで、私たちは御三家の地位を失うだけでなく、吉宮にも住めなくなってしまったのよ。」と語った。
この時、私は発狂してしまっていた。だから、正確な事実を訴えることができなかった。
そう。依頼を受けたのは曽祖父だが、それを実行したのは私の祖母の妹である初代神宮寺サラだったのだ。しかも、呪うためというのは寺田家の依頼として「ライバルを蹴落とす」程度のものだったのだ。
それを寺田家の人間が後に「神宮寺家は吉宮を呪った!」と根拠なき告発を行い、神宮寺家は吉宮御三家から排除され、新たに寺田家が吉宮御三家に加わったのだ。
-続く-