駄弁る少女たち
女の子たちがお喋りしてる、それだけで価値があると思いません?
「ところで話は変わるんだけど、どうしてキリンって首が長いのかしら?」
靴下の片っぽしかない時の対処法という話題に詰まると同時に、間髪入れずに次の話題を始める霧子。
霧子はこういう時の仕切り直しが上手く、いつも本当に頼り甲斐がある。
「き、キリンね……た、高いところの果物を採るためじゃなかったかしら?」
私もその話題に素早く乗っかり、それっぽいことを返すと、霧子は腕を組んで考えるふりをしながら、
「いや、それならゾウみたいに鼻を長くすれば良くないかしら?どうしてキリンは首で、ゾウは鼻なのかしらね」
確かにそれは分からない。同じ高いところにある果物を摂ることが目的ならば、首でも鼻でも構わない気がする。
「どうしてでしょうね……」
「うーん……」
「…………」
「…………」
「……あ、あのあのっ!飴食べる人っ!」
会話が途切れそうになったところへ、結菜ちゃんの申し出により、迷わず全員挙手する。
「じゃあ私は紅茶を淹れてくるから、会話を続けておいて」
美里は席を立ち上がって、湯沸かしのポットを取りに向かう。
「……私つくづく思うのよ。全国の学校の黒板、全部電子化すべきだって。どうしても予算が厳しければホワイトボードの方が良くないかしら?」
再び何の前触れもなく、学校に対して文句を口にし、共感を求めてくる霧子。
「確かにそうね。黒板ってあの音が嫌よね」
「……た、確かにそうですっ!」
同感の私と結菜。
「ホワイトボードの方が黒板より値段も安いんだし、学校は全てホワイトボードの方がいいわよね」
「コスパも消しやすさもホワイトボードの方が優れているのに、どうしてそうしないのかしら?」
「どうしてでしょうね……」
「わ、分かりません……」
「…………」
「…………」
「…………」
「お待たせ〜……って、おっと手が滑ったあああっ!!」
紅茶を持ってきた美里はわざとらしい声をあげ、トレイごと霧子にぶちまけた。
「あっっっつ!!なにすんのよ!!」
ダイレクトに熱湯同然の紅茶が降りかかった霧子は、普段の落ち着いた様子から一転しろ、机を殴りつけて立ち上がる。
「そっちこそ、話しててって言ったじゃない!」
「話題提供してるのは、いつも私じゃない!それをあんたらが上手く乗ってくれないからいけないんじゃない!」
「だってキリンが首長いとか学校の黒板なんて、どうだっていいもん!そっちこそ話題提供が下手すぎるのよ!」
「なんですってぇ〜……?」
「文句があるのぉ?」
火花を散らせる2人。
「うぅ〜っ……」
それを見ていた結菜ちゃんは、うるうると涙ぐむ。
「あっ……ごめん結菜ちゃん」
「け、喧嘩はやめるわ。だから泣くのは」
「そうじゃありませんっ!」
結菜ちゃんはもう我慢できないと言った様子で、机を力強く叩いて立ち上がる。
「皆さんとお話しすること飽きたんです!もう最悪です……どうして、どうしてこんなことしなくちゃいけないんですかぁあ〜……」
そのまま机に突っ伏して泣き出す。
何気に酷い言葉だ。
だが、確かにこうして会話を始めてかなりの時間が経った。
しかし、この4人と会話をやめるわけにはいかず、私は結菜の言葉に続けて言う。
「しょーがないでしょ。会話が止まると死んじゃうデスゲームの最中なんだから」




