表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/473

第三章 メルキド侵攻 第三話

デミアン要塞の見張りはワイバニアの大軍がのっそりと、しかし、確実に動く様子を確認すると、鐘を鳴らして叫んだ。


「来るぞ! ワイバニアが動いた! 攻めて来るぞ!」


デミアン要塞の司令官クバ・リブレは「ワイバニア動く」の報告に即座に命令を下した。


「首都ロークラインに援軍の要請だ。それから全要塞に警戒警報を発令しろ。総員、戦闘配置につけ」


リブレは悲壮な覚悟を抱いていた。ワイバニアはほぼ全軍、しかも同時にこの要塞を落とすつもりだ。せめて一つなら、戦いようはある。だが、かつてない大軍を相手に持ちこたえることができるだろうか。攻め込まれた時点で、この要塞の命運は尽きているのではないか。リブレは絶望を感じずにはいられなかった。


「さて、どう攻めようかのう……」


カルデーニオ要塞を包囲したグレゴールは、そびえ立つ巨大要塞を前に思案を巡らせていた。第四軍団長グレゴール・フォン・ベッケンバウアーはフォレスタル第一軍団長のフランシス・ピットと並ぶ、アルマダで随一の戦歴を誇る指揮官だった。その経験に裏打ちされた戦術と老獪さは並の指揮官では太刀打ち出来ず、局面によっては、第一軍団ですら一歩譲るほどの名将だった。


「もう! ちゃっちゃと攻撃して、さっさと皆殺しにしちゃおうよ! あんな要塞!」


グレゴールが思案していると、じゃらじゃらと悪趣味で派手な飾りをつけた鎧を鳴らして後ろから第十一軍団長のザビーネ・カーンが話しかけてきた。ザビーネは二四歳。十二軍団長の中では年少の部類に入る。二四歳と言う若い年齢にも関わらず、彼女が軍団長になれたのはザビーネ個人の戦闘力と戦闘における残忍さによるものだった。彼女率いる部隊は敵の退却を許さず、敵は全滅するか、戦闘不能になるまでたたきのめされるかの二つに一つだった。血風乱れる戦場で、彼女は敵が全滅する様を悦に入りながら見ていたという。彼女の残忍さは、十二軍団の中でも群を抜いていた。


「ほほ……若い者は元気があってよいのう。じゃが、総指揮官は儂じゃ。求めておらぬのに意見するでない。身の程をわきまえんか」


静かな口ぶりでグレゴールはザビーネを睨みつけた。幾多の死線をくぐり抜けたその眼光は鋭く、ザビーネは恐怖に震えてその場に座り込んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ