第二章 戦乱への序曲 第四十三話
ヘルマンの街に、第一軍団一個龍騎兵中隊一〇〇名が音もなく着陸した。ヨハネスを殺し、自分自身を窮地に追い込んだ暗殺者達を一瞬で倒した。アンジェラは第一軍団の強さをまざまざと見せつけられた。格が違う。アンジェラは国外に出られないと悟り、剣を置いた。
「私をどこへなりとも連れて行け。覚悟はできている」
アンジェラの様子を変に思ったのか、ハイネはアンジェラに言った。
「何を勘違いしている。さぁ、行け」
「何故だ? お前は私を連れ戻しにきたのではないのか?」
「ヨハネスの頼みだ。アンジェラに命の危機がせまったときは守ってやってくれとな。いずれ戦場でまみえる日も来るだろう。その時を楽しみにしている。アルレスハイム」
ハイネは冷静な表情を崩さずに言った。アンジェラは笑ってハイネに返した。
「馬鹿を言うな。私はごめんだ。お前に勝てる訳がないからな」
「そうか……。では、さらばだ」
「あぁ」
二人の軍団長は互いに背を向けると、それぞれの道を進んでいった。それから四日後、アンジェラ・フォン・アルレスハイムがフォレスタル王国の亡命を希望しているとの知らせがフォレスタル王城の軍首脳部に届けられるのである。
「軍団長……」
フォレスタル王城の廊下、フォレスタル第五軍団参謀長のメアリ・ピットがヒーリーに呼びかけた。
「わかっているよ。大変なことになったな。これは……」
ヒーリーは会議室の扉を開けた。そこにはジェイムズ、エリク、マクベスらフォレスタル首脳、フランシス、ハーヴェイ、ウィリアム、マーガレットらフォレスタルの各軍団長がすでに円卓についていた。