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第二章 戦乱への序曲 第四十話

血まみれのドレスを引きずって、アンジェラは官舎までの道のりを歩いていた。往来の人々は血まみれで顔に刀傷をさらしたアンジェラを見ては身を引いていた。官舎に戻ったアンジェラは血を洗い流し、龍の眼を再生させた。そこにはヨハネスの最後の姿が記録されていた。


「アンジェラ……。君をこんなことに巻き込んでしまって、済まない……。僕を襲った黒幕は右元帥のシモーヌ。刺客から聞いた情報だ。まちがいない。……奴は、僕にワイバニアの新時代に興味はないかと言っていた。陛下の死も、彼女らが仕組んでいたんだ。封筒には皇帝崩御の日のことが書かれている……。アンジェラ、何か危機が迫った時はフォレスタルに亡命するんだ……」


息も絶え絶えに、最後の力を振り絞ってヨハネスは龍の眼に語った。いい終えたヨハネスは力なく笑うと映像を切った。ヨハネスが残した血染めの手紙には、皇帝が殺害された確かな証拠が記されていた。


軍服に着替え、証拠を見終えたとき、官舎の扉をノックする音が聞こえた。


「ゴッドフリート……。お前か」


第七軍団副軍団長のゴッドフリートがアンジェラのもとを訪ねてきた。


「軍団長。……仮面はどうされたのですか?」


ゴッドフリートは仮面を取ったアンジェラに驚いた。ゴッドフリートは、ヨハネスの死と現場にアンジェラの仮面が落ちていたことを知り、アンジェラのもとを訪れたことを説明した。


「わたしがヨハネス殺しの犯人として疑われているということか。だが、わたしは違う。犯人は右元帥のシモーヌ・ド・ビフレストだ。それだけではない、皇帝陛下に直接手を下したのは他ならぬ皇太子殿下だ。彼らは手を組み、ワイバニアを乗っ取ったのだ」


アンジェラはゴッドフリートにヨハネス殺しと皇帝崩御の真相を伝えた。


「そうですか。軍団長は全てを知っているんですね……」


ゴッドフリートの態度が変わった。アンジェラはゴッドフリートの態度を不審に思った。


「ゴッドフリート……お前、何を言っている?」


「右元帥閣下がわたしに命じられたのですよ。軍団長が何かつかんでいるようならば、消せと。そして、次の軍団長にはわたしがなるようにとね」


真面目な軍人の仮面を脱ぎ捨てて、ゴッドフリートは下卑た笑いを浮かべた。アンジェラは信頼していた部下に裏切られ、悔しそうな表情をした。


「下種め……」


アンジェラはゴッドフリートを睨みつけた。ゴッドフリートは冷酷な笑みを浮かべて剣を引き抜いた。


「いやいや、それだけわたしが優秀だということですよ。それでは、ハイデルベルグ軍団長によろしく……軍団長」


ゴッドフリートが剣を振り下ろす一瞬、アンジェラは愛剣を手に取ると、抜き様にゴッドフリートを一閃した。ゴッドフリートは苦悶の表情を浮かべ、床に倒れた。


「まだだな。貴様程度の下種に到底軍団長など務まりはしない。あの世でヨハネスにあいさつするがいい。……もっとも、ヨハネスには会えないだろうがな」


剣を振り、ついた血を払いながら、アンジェラはゴッドフリートの死体を見下ろした。

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