第二章 戦乱への序曲 第三十一話
「ぐっ……!」
暗殺者は壁に叩き付けられた。肩にはナイフが突き刺さり、動くことができなかった。暗殺者はまわりを見回したが、ことごとくが胸にナイフを突き刺されたり、首を裂かれ絶命していた。
「さて、あなたで最後だ。だれの差し金で私達の暗殺を図ったか教えてもらおうか」
マクベスは手にナイフを携えて言った。その表情は普段の穏やかで優しいマクベスからは想像もつかないほど冷酷なもので、暗殺者をひるませるに十分な迫力を持っていた。命運が尽きたと悟った暗殺者は、何も告げることなく、口に含んだ毒を飲み、みずから命を絶った。
同じ頃、王太子エリクを襲った暗殺者も全て退治されていた。エリクとアルカディアはそれぞれ剣と槍を持って応戦し、それぞれ一刀、一閃のもとに暗殺者を切り伏せた。
「怪我はないか? アルカディア」
エリクは妻を気遣ったが、無用な心配だった。
「ご心配なく、私とて武門の国に生まれ育った身、この程度の賊のあしらい方は心得ています」
アルカディアは流れるように優美な動きで槍を一回転させると、愛する夫に言った。
王族三人の暗殺に失敗した影達は国王の寝所にも侵入を果たしたが、ここでも暗殺者達は劣勢を強いられていた。国王のジェイムズは愛用の大剣をふるって応戦した。三人の暗殺者を一刀の下に斬り捨てたジェイムズは大剣を正眼に構えた。
標的の意外な抵抗に戸惑った暗殺者達はジェイムズから距離をとると、投擲用のナイフを構えた。ジェイムズに向かってナイフが放たれる寸前、国王の部屋の扉が勢いよく開き、銃弾とナイフが暗殺者をなぎ倒した。
「ご無事ですか? 父上」
暗殺者を倒したマクベスとヒーリーの間から、エリクが現れた。三人はほぼ同時にジェイムズの部屋に着くと、タイミングを合わせて暗殺者を攻撃したのだった。
「まぁ、なんとかな。それよりもっと早く来んか。危うい目にあったぞ」
ジェイムズは三人の息子達に悪態をついた。
「何を言ってるんですか。我々が束になってもかなわないくせに」
ジェイムズの強さは折り紙付きだった。達人と名高いピットのもとで腕を磨き、その強さはピットと並ぶとほどの達人と言われていた。ジェイムズはかがんで死体を調べ始めた。
「こいつらは一体何者だ?」
「それは彼に聞いた方がいいかもしれませんよ」
一同が振り返ると、そこには猿ぐつわをさせた暗殺者を引き連れたラグとメルがいた。