第二章 戦乱への序曲 第二十一話
「ヒーリー。君は今回の主役だろう。いつまでも下着姿でいては皆の笑い者になってしまうよ。ポーラ。ヒーリーの着替えを手伝ってくれないか」
「しかし、マクベス様」
「お願いだ。ポーラ」
反論しようとするポーラをマクベスは目線一つで黙らせた。
「兄上。部屋にはイスラが……」
ヒーリーの言葉を聞いたマクベスは小さくため息をついた。
「イスラ公女か……。わかった、私も部屋に行くとしよう。少し待っててくれ。それまでに、ポーラと仲直りするんだよ」
廊下にはメイド服のポーラと下着姿のヒーリーが残された。城の中とは言え、あまりにも変な二人組だった。二人は壁を背にして互いをみることなく、ただ、窓の外の景色を眺めていた。
「ポーラ。その、ごめん」
ヒーリーは自分に非は全くないにも関わらず、小声でポーラに謝った。
「なんでヒーリーが謝るのよ。私が勝手に怒ったんだから、ヒーリーは悪くないわよ」
ポーラは部屋の中にイスラがいたことをまだ根に持っているようで、仏頂面を隠さなかった。
「でも、ポーラはまだ怒ってるだろ」
ヒーリーの頼りない様子に、ポーラは腕を組んで大きなため息をついた。
「私が怒ってるのは、ヒーリーの頼りなさよ。もっとしゃんとしなさいよ。軍団長でしょう?」
「あぁ、ごめん。ポーラ」
「わかればいいのよ」
二人が話していると、マクベスが一人の若い女性を連れてやってきた。メルキド人特有の褐色の肌をしているが、きちんと身なりを整えた才女の印象を受ける美女だった。マクベスら四人はヒーリーの部屋の前にやってきた。マクベスはドアをノックし、扉を開けると、すぐに少女が飛び出した。