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第六章 ミュセドーラス平野大決戦! 第百七十一話

ミュセドーラス平野東西の山地に巨大な湖がある。水を満々とたたえたこの湖は、農業用に整備された人造湖であると星王歴二一六二年メルキド公国の計画書には記されている。作業にあたった人夫たちも、ミュセドーラス平野に暮らしていた民もそう信じて疑わなかった。


しかし、実態はフランシスとタワリッシによって計画された偽装湖であった。湖自体を巨大な兵器となし、ミュセドーラス平野に集結した敵軍を圧倒的な水量で押し流す。フォレスタル・メルキド連合軍の陣形も戦術もすべてこのためにあった。大軍の運用に不向きだった入口部も、今や既に岩石によって塞がれ、退路は断たれている。


逃げ場を失ったワイバニア兵の腹に重低音が響く。それは彼らをヴァルハラへといざなう、死の音だった。


「マルガレーテ! 馬から下りなさい!」


音の意味にいち早く気づいたフランシスカが上官を馬から引きずり下ろした。


「何するんだい!」


「息を止めて。脚を踏ん張って。もうすぐ……」


そう言ったフランシスカの顔と唇がみるみる青ざめていく。マルガレーテは参謀長の言葉に従った。


「総員。小隊単位で菱形陣を組め! 流されるな!」


第八軍団長ゲオルグ・ヒッパーも迅速に命令を下した。水が来るまで、まだ少し時間がある。退避は無理だが、耐えることは出来る。堅実さでならす軍団長はパニックになりかけていた軍団を鉄の意思で抑え込んだ。


このとき、もっとも安全な位置にいたのはハイネ率いる第一軍団であった。


「いかがいたしますか? 軍団長」


ハイネはエルンストの問いに答えなかった。フランシスの死の意味。フォレスタル第一軍団の戦い。敵軍の後退。全てがこの水攻めにあった。そして、ハイネにはこれからのワイバニア軍と自軍の未来が見えていた。


ミュセドーラス平野の軍団がほぼ全滅となること。大規模な追撃戦が行われること。そして敵中深く切り込んだ第一軍団が、最も危険になるということを。


さらに自分自身が最も屈辱的な命令を下さなければならないと言うことを。


「攻撃を再開し、全軍本営へと帰陣する」


「逃げろということですか?」


「そうだ」


ハイネの美麗な唇から一筋の血が垂れる。それは今まで戦場で一度も傷を負ったことがない彼が流す、はじめての血だった。


ワイバニア軍はフォレスタル第五軍団に攻撃を再開した。


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