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第六章 ミュセドーラス平野大決戦! 第百六七話

フォレスタル第一軍団の戦闘力は最早皆無に等しかった。兵達はほとんど失われ、フランシスの護衛隊一〇〇あまりが奮戦していたが、一人、また一人とミュセドーラス平野を血に染めて散っていった。


「フランシス・ピットだ! 討ち取れば、末代までの英雄だぞ!」


フランシス最後の護衛を斬り殺したワイバニアの中隊長は部下をけしかけると、自らも剣についた血糊を払い、フランシスに斬り掛かった。


だが、ここで異常な事態が起きた。ワイバニア軍の攻撃が止んだのである。


「何してる!? 攻撃を中止しろなんて命令していないぞ」


「何があった!?」


前線の大隊長達は困惑を隠せなかったが、ただ一人マレーネはわかっていた。幾度もの死線を超えたものだけが身にまとう殺気。以前、グレゴールがザビーネを昏倒させたときと同類の殺気を比較にならないスケールでフランシスはたたきつけたのである。


幽鬼のように立ち尽くすワイバニア兵、そのことごとくが白目を剥き、口からは泡を吹いていた。


「このフランシス・ピットが首、やすやすとくれてやるほど甘うないぞ」


フランシスは軽くワイバニア兵に手を触れた。武芸の技を見せた訳ではなく、ただ触れただけ。その動きで、彼を中心に五〇〇人の兵士が地に倒れ伏した。


「かかれぇぇ!」


誰が発したかは、判然としていない。しかし、この叫びがワイバニア軍の理性を断ち切ったのは確かである。ワイバニア軍はただ一人の老人に怒濤となって押し寄せた。


「楽ばかりしてはおれんのぅ」


フランシスは笑みを浮かべると、大剣を一閃し、騎兵三人を血祭りに上げた。


「一振りで三人……」


たじろいだ歩兵もせきたてられるように前に出ることを余儀なくされた。フランシスはその間にも十人、二十人と斬り捨てている。ワイバニア歩兵は目を閉じ、フランシスへと槍を突き出した。しかし、彼もまた、仲間と同じ運命をたどった。


このとき、フランシスが斬ったのは三百人とも、五百人とも言われている。”一騎当千という言葉をフランシス・ピット以外に使うな”と、後世語り継がれることになる。歩兵大隊長を数合のうちに両断したフランシスは、剣を杖代わりに地面に突き刺した。


「年には勝てんな……」


隙だらけの態勢にも関わらず、ワイバニア軍は誰一人攻撃を仕掛けようとはしなかった。鬼神のごとき戦いぶりを間近で見て、うかつに攻めようとは誰も考えなかったのである。


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