第六章 ミュセドーラス平野大決戦! 第百六三話
ミュセドーラス平野中央部、フランシス・ピット率いるフォレスタル第一軍団は反転したワイバニア軍によって包囲されつつあった。
「全軍、密集隊形。決して陣を崩すな」
フランシスは平野中央部に向けて、さらに前進させながら、兵を密集させた。この戦いはワイバニア軍の主力がミュセドーラス平野に閉じ込められないと意味がない。敵を一兵でも多くひきつけるため、フランシスらは時間を稼がねばならなかった。
フランシスの部隊にもっとも早く到着したのは、マレーネ・フォン・アウブスブルグ率いるワイバニア第二軍団であった。
「攻撃」
わずか一日、三度の手合わせでマレーネは、フランシスの戦い方を熟知していた。彼女はフランシスら第一軍団の進路を遮ると、陣形の急所となるポイントに攻撃を集中させた。
意図的に兵力が疎と密になるポイントを作り出し、点を線で結ぶ様に攻撃を仕掛ける。まるで、たまねぎの皮を剥く様にマレーネは強固なフランシスの密集隊形を崩していった。
「いまいましい攻撃だのう。こちらが付け入る隙を与えないとは……」
「味方を待っているのでしょう。真に恐ろしいのは、これからです」
「そうじゃな」
やぐらの上からはワイバニアの軍団旗がみるみる近づいてくるのが見える。第二軍団の後方には、第六軍団、さらにフランシスらの前には第九、第十二軍団、少しおくれて第三軍団の姿があった。
「それにしても……。はかったように、鶴翼陣形。それも、少しの乱れもないとは、大したものよ」
「えぇ」
「我らも、戦うとしようぞ。彼らに負けぬくらい、堂々とな」
「はい」
フォレスタル一の老軍団長は指揮杖を振り、最後の命令を発した。