第六章 ミュセドーラス平野大決戦! 第百五一話
「次は敵第一軍団じゃ。再びワイバニア最強軍団と戦えるとはの。腕が鳴るわい」
疾走する戦闘馬車のやぐらの上でフォレスタル第一軍団長フランシス・ピットは不敵に微笑んだ。
「しかし、我々の兵力は三〇〇〇を切っております。どこまで戦えるか……」
「珍しいな、キングストン。弱音を吐くとはお前らしくないぞ」
「ははは、わたしも人間ですから。最後に、今まで言ったこともないことも言いたくなります」
「それで、どうする?」
「敵さんに聞きたいものです。何せ、我々に向かってきてくれなければ、我々が戦う意味がありませんからなぁ……」
フォレスタル第一軍団参謀長キングストン・ウェルズリーは肩をすくめた。フォレスタル第一軍団の役目はワイバニア軍全軍の注意をミュセドーラス平野にひきつけることにある。ワイバニア軍の動きはフォレスタル第一軍団にとって戦いの結末以上に大事な意味を持っていた。自分たちが犬死ににならないために、ミュセドーラス平野に生きた証を残す為に、彼らは敵の動きを知りたがったのである。
フランシスは周囲を見やった。わずかに敵の動きが見える。フォレスタル最強の軍団長は老獪な笑みを浮かべた。
「キングストン。どうやら犬死ににはならなさそうだぞ」
「おぉ……」
ウェルズリーはその眼で見た。ワイバニア軍第二、第六軍団が反転しつつあること。さらに北へ双眼鏡を向けると、ワイバニア軍の予備兵力が自分たちに方向を向けつつあるのが見えた。
ワイバニア軍は、フォレスタル第一軍団を最優先に倒すべき敵であると認識したのだ。
幾多の修羅場を経験したウェルズリーでさえ、身震いを押さえられなかった。
「全軍、速度陣形そのまま。目標、ワイバニア第一軍団」
激突まであとわずか。フォレスタル第一軍団は、ワイバニア第一軍団にまっすぐ向かっていった。