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第六章 ミュセドーラス平野大決戦! 第百五十話

ワイバニア第八軍団を撃破したフォレスタル第一軍団が、全速力でハイネらワイバニア第一軍団に向かう様子を、ヒーリーは戦闘馬車のやぐらから見つめていた。


「ピット爺……」


手すりを握る手が汗ばんでいる。ヒーリーは眼を背けることが出来なかった。師の最後の戦いを、そして老将の悲しくも強い覚悟を。メルキド、フォレスタル連合軍の勝利の為に、フランシスはその命を差し出していた。


「ヒーリー……。わたしはもう……」


ヒーリーの傍らに控えていた、参謀長メアリ・ピットが唇を手で覆った。遠くない未来、彼女は確実に祖父を失うことになる。どんなに覚悟していても、体はそれを許してくれなかった。


この場にいることすら辛いだろう。だが、ヒーリーはその場を去ることを許さなかった。


「参謀長、酷だとは思うが、君だけは、この戦いを見届けなければならない。君は、ピット爺や、いや、フランシス卿の孫娘だ。彼の最期を看取る義務がある」


「はい」


メアリから大粒の涙がこぼれた。ヒーリーはあえて優しい言葉をかけようとしなかった。どんなに言葉を重ねても、それが彼女の言葉を癒すものになり得ないことを、彼は一番分かっていたからである。


(冷たい男だな。ヒーリー・エル・フォレスタル)


ヒーリーは心の中で自嘲した。だが、部下と師を気遣ってばかりでいられない。目の前には、ハイネ・フォン・クライネヴァルトという強敵が控えているのだ。そして、作戦の実行まであまり時間がない。ヒーリーら、フォレスタル第五軍団は一刻も早く斜面に退避しなければならなかった。


「第五軍団、後退準備」


ヒーリーは、伝令兵を呼び寄せると、短く言った。


「しかし、それでは敵に追撃されてしまいます!」


参謀の一人が顔を青ざめさせた。今、敵に後ろを見せては間違いなく、追い討ちをかけられる。万全の備えをしていても、第五軍団は大きな損害を受けるだろう。それはヒーリーもよく承知していた。


「分かっているさ。だが、斜面に退避しなければ勝利はない。俺たちも全滅してしまうだろう。第一軍団がワイバニア第一軍団に攻撃を仕掛けたときが、唯一のチャンスだ」


側面の友軍と前方の敵をにらみながら、ヒーリーは言った。


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