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第六章 ミュセドーラス平野大決戦! 第百四三話

軍団長フランシス・ピットの号令一下、斜面に兵士たちのときの声が響いた。マレーネも、マルガレーテも、フランシスらの近くにいた者なら、誰もが振り向いた。特大の大将旗をなびかせて、五〇〇〇の兵が突如平野に現れたのである。


このフランシスの登場に驚愕したのは、マレーネとリピッシュであろう。彼らは後退を始めつつあるメルキド軍第六軍団と第四軍団を攻撃するために陣形を転換している最中であったのだから。このこしゃくな奇兵に対し、すみやかに陣形を再編し、防御を固めたのは二人の非凡さの証明だった。並の将ならば、その守りの堅さに、時間を浪費したであろう。しかし、彼らが相手にしているのは、アルマダで最も傑出した軍団長と参謀長であった。


フランシスは、二人が技巧を凝らし、守りを固めた連結部には目もくれず、そのさらに根元、わずかに兵力が疎になった部分に自軍の鋭鋒を突き刺した。騎兵の槍と機動歩兵の戦闘馬車が、ワイバニア歩兵をなぎ倒していく。


このままでもフランシスは難なくマレーネの軍団を突破できたが、フランシスとウェルズリーは、ここで老獪さを発揮した。突出した部隊を下げると、第二陣をさらに三つの戦闘集団に分け、救援に現れたワイバニア兵に痛撃を加えると、さらに一つの陣形に戻し、さらに薄くなった防御を堂々と突破したのである。


ほぼなす術もなく、自軍を崩壊させられたマレーネはわずかに数瞬ではあったが、自失させられた。エアハルトの呼びかけで現実に引き戻されたマレーネが見たのは、次の獲物を求めて移動するフォレスタル軍と高速で戦場から離脱していくメルキド軍第六軍団の姿だった。


「司令部総員、フォレスタル第一軍団に敬礼」


ラシアン・フェイルードは部下に敬礼を命じた。自分たちを逃がす隙を作ってくれたフォレスタル第一軍団がどうなるか、彼らは知っている。知っているからこそ、謝意と敬意を送らずにはいられなかった。


一方、フォレスタル軍第一軍団先鋒は、ディサリータ率いるメルキド軍第四軍団を攻撃するワイバニア第六軍団をとらえていた。


「よし、横槍を受けようぞ。突出した重装歩兵大隊を側面から攻撃せよ」


整然と隊伍を組んだワイバニア重装歩兵に騎兵大隊がなだれこんだ。その突進力に、陣形はなすすべもなく崩されていく。


「側面から攻撃されたのなら、こちらも側面から攻撃すればよい。何を慌てることがある」


ワイバニア第六軍団長オリバー・リピッシュは冷静に言った。すぐに予備兵力として温存されていた歩兵大隊が、重装歩兵の救援に向かったが、フランシスとウェルズリーのコンビは冷静無比のリピッシュの先を読んでいた。フォレスタル軍は歩兵の進路に戦闘馬車を横付けさせると、鋼鉄のシャワーを浴びせかけたのである。


全身にボウガンの鉄矢を受けたワイバニア歩兵は、ミュセドーラス平野の大地と永遠の口づけをかわした。ワイバニアが誇る軍団長がまた一人、フランシスの前に敗れ去ったのである。

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