表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
430/473

第六章 ミュセドーラス平野大決戦! 第百三六話

「いまいましい! ここまでコケにされるなんてね。第九軍団、あの死に損ないどもを片付けるよ! あたしも出る!」


後退しつつあるフォレスタル第四軍団を目の前に、マルガレーテは青筋を立てた。


「待ちなさい。これ以上動いてはだめ。わたし達の目的は平野内の戦力バランスを崩すことよ!」


フランシスカは僚友に言った。彼女は敵軍の戦術的後退がが偽装でないことを見抜いていたが、同時に後退の陰にさらなる悪魔的な戦術が隠されていることを看破していた。


より損害が少ない状態で戦うにはさえぎるもののいなくなった渓谷出口を目指す他はなかったのである。


「あんたの言いたいことは分かるよ、フランシスカ。けど、このままやられ放題はあたしの腹の虫が収まらないんだ!」


マルガレーテの焼けた肌が紅潮しているのが、傍らの参謀長にもよくわかった。今日、この日だけは、マルガレーテを止めねばならない。お嬢様然とした参謀長は汗ばむ手をにぎりしめた。ここで指揮官を制止しなければ、全軍の勝利はおぼつかないのだから。


「待ちなさい。マルガレーテ!」


「フランシスカ、軍団長はあたしだ。全軍、全速で前進!」


フランシスカの制止を振り切ったマルガレーテ率いる第九軍団先鋒に、黒金の流星が降り注いだ。


「ちっ!」


舌打ちするマルガレーテの頭上に、翡翠色の軍旗が翻る。それはフォレスタル軍の旗の色だった。


「スタンリー・ホワイト……」


頭上の崖をにらみつけるマルガレーテは敵将の名を呼び、歯ぎしりした。マルガレーテの前には、すでに追跡不可能な程遠ざかったマーガレット本隊の姿が見える。もう、この戦いは終わったのだ。ワイバニア軍指折りの勇将は静かに愛用のウォーハンマーを下ろした。


「マルガレーテ……」


僚友を思いやるフランシスカの後方で、低く重い音が響いた。攻城兵中隊が予備軍団後方の崖を落としたのである。はるかに狭められた侵入口には、もう大軍が入り込める余地はない。ワイバニア軍は完全に退路を塞がれる形になった。


「そう、これで完全に終わったのね。この戦いが……」


フランシスカは一言つぶやいた。


ワイバニア第九軍団長マルガレーテ・ハイネマン率いるワイバニア軍予備兵力は多大な犠牲を払いながらも侵入口の突破に成功した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ