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第二章 戦乱への序曲 第五話

「陛下。敗軍の将、三名の処遇はいかが致しましょう? 軍団の損害が皆無であったハイデルベルグ軍団長はともかくとして、ネルトリンゲン、アルレスハイム両軍団長には処分はあってしかるべきと思いますが……」


ハンスは主君に、二軍団長の処分を尋ねた。ヨハネスはアンジェラらを弁護すべく、発言しようとしたが、皇太子ジギスムントによって一蹴させられた。皇帝はしばらく考える仕草をして、傍らに立っている女性に声をかけた。


「右元帥。そちはどう思う?」


皇帝に意見を求められ、右元帥のシモーヌ・ド・ビフレストは言った。


「……戦いぶりを見れば、ネルトリンゲンの手際の悪さは明らか。敗戦の責任をとって自死というのがよろしいかと。アルレスハイムは敵に与えた損害も大きいので……降格が適当であると思いますわ」


露出の高い服に身を包んだ美貌の女元帥は二人を見下ろした。


「左元帥の意見はどうか?」


「私めの考えは常に陛下と共にありますれば……」


左元帥のハンスは主君に一礼した。


「陛下。私は右元帥と考えを同じくいたします。ここで甘い姿を見せては外にワイバニアの恥を知らしめることになりましょうぞ」


父に問われることなく、皇太子ジギスムントは自らの意見を述べた。アレクサンデルは息子の態度に少し表情を曇らせた。


「それでは処分を言い渡す」


若干の思考のうち、皇帝アレクサンデルは静かに席を立った。


「ジークムント・フォン・ネルトリンゲン」


名を呼ばれ、ジークムントは起立した。恐れを知らぬと言われた彼も今回ばかりは額に汗を浮かべている。


「用兵家としての勝敗は常に存在すること。敗戦によるそちの罪は問わぬ。兵を養い、自らの腕を錬磨し、次へ活かせ」


「はは……」


ジークムントは恭しく一礼した。


「アンジェラ・フォン・アルレスハイム」


「はっ!」


アンジェラもアレクサンデルの呼びかけに起立した。


「そちも同じだ。罪は問わぬ。次の戦でそちの腕を存分に見せるが良い」


「は」


アンジェラもまた、アレクサンデルに一礼し、着席した。


「よいか諸将よ。敵を侮るな。歴史は今変わったのだ。だが、新たな歴史は我々が作る。龍の旗の下に」


「龍の旗の下に!」


十二軍団長は起立し、最敬礼と共に唱和した。円卓を囲むワイバニアの最高指揮官達を背に皇帝はマントを翻し、竜王の間をあとにした。

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