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第六章 ミュセドーラス平野大決戦! 第百十四話

ハイネの陣形と戦いぶりに対して、ヒーリーはミスを犯していた。ヒーリーもハイネと同じ鶴翼陣形を敷いていた。しかし、その防御の強固さはハイネの比ではなかった。


第一陣の装甲兵員輸送馬車が敵の突進を阻む防塁となし、第二陣の重装歩兵が敵の進撃を防ぎつつ後退し、両翼に配された弓兵大隊のバリスタが、重装歩兵大隊におびき寄せられた敵を殲滅する。


ヒーリーは即席の要塞をワイバニア第一軍団の前に作り上げた。


兵員輸送馬車による同航戦、簡易要塞の構築。どちらもアルマダ史上初の戦術だったが、戦略的には誤りだった。


今回の場合、ヒーリー率いるフォレスタル第五軍団はワイバニア軍に向けて後方から攻撃をしかけなければならなかった。側面よりも後方の方がより守りは薄かったためである。


また、ハイネの本来の目的はフォレスタル軍を増援が来るまで、無力化させることにあり、ヒーリーがこのような戦術をとった瞬間、ハイネの戦略的勝利は確定したのである。


ヒーリーもまた一人の人間に過ぎないと言う証明でもある。彼はハイネの戦いにとらわれたばかりか、ミュセドーラス平野でのハイネの攻撃を警戒するあまり、消極的に過ぎる戦術を選択してしまったのだ。


「わたしの買いかぶりすぎか。ヒーリー・エル・フォレスタル」


「見事な陣形ですね。ですが、あれでは我々を攻めに出られないでしょう」


「陣形自体で言えば、アルマダ最高度の防御力だろう。あれを抜くことは、わたしですら容易ではない。だが、攻めなければいいだけの話だ。我々はもう、フォレスタル軍を十分すぎるほど牽制しているのだからな」


馬車に隠れているが、馬上のハイネからはヒーリーの陣が辛うじて見える。重装歩兵の配置、弓兵大隊のクロスファイアポイント、そしてその後方で待機する遊撃戦力。ひとたび誘い込まれたら、全滅の憂き目に遭うだろう。フォレスタル軍が反転攻勢に転じた時の攻撃力は、かつてメルキド第一軍団を全滅せしめた龍将三十六陣”臥龍”を倍して余りあるとハイネは試算した。


「惜しいものだ。それだけの力量を持ちながら、過ちを犯すとはな」


ハイネは馬上から全軍待機の命令を出した。


「おれは、奴に負けた……」


ヒーリーもここにきて、自分の過ちに気づいた。陣形は完璧だ。完璧すぎた。もともと、能動的に攻撃を仕掛ける戦術よりも、相手の攻撃を誘い、カウンターによって敵に大損害を与える戦術を得意とするヒーリーである。今回の陣はその極致と言ってもいいだろう。


しかし、ヒーリーの方から動くことが出来ない陣形を作ってしまった。それ故に結果として、ヒーリーは敵の戦略を助けることになった。


対峙していれば、両軍の動きが手に取るように分かる。ここでみだりに兵を動かすことは、第五軍団の敗北につながる。手詰まりの状態になってしまった。

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