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第六章 ミュセドーラス平野大決戦! 第百十話

ワイバニア第一軍団、騎兵大隊と弓兵大隊はハイネの命令を完璧に実行した。訓練された暗殺者とはいえ、ワイバニア最強の一個小隊からの一斉射を受けてはひとたまりもなかった。多勢に無勢であると感じた影達は矢を受けると、たちまち闇に消えた。影を倒した第一軍団兵士達は顔を見あわせたが、何も分からなかった。ただ、自分たちには到底理解しがたい事象が存在する。それだけは彼らは理解できた。


頭を失った集団はなすすべもなく瓦解する。メルキド軍第二軍団はもう戦えるだけの力を残していなかった。ウーヴェの前にはありの這い出る隙間のないワイバニア第一軍団の防御壁が塞いでいる。もう、ここに留まる必要はない。ウーヴェは舌打ちすると、音もなく闇に消えた。


「よし、全軍退け」


ハイネは各大隊の長に命じた。もう斜面で戦う意味はない。第一軍団は風のような速さで斜面を下っていった。


「まさか敵に助けられるとはな……」


タワリッシは小さく声を出した。タワリッシが構築した防御陣の前方には魂が抜けたように立ち尽くすメルキド軍第二軍団の姿があった。最大の危機はとりあえず回避できた。しかし、連合軍全体の危機はさっていない。龍翼の陣の要が崩れたのだ。左右両翼は分断されているし、連合軍総司令部はワイバニア軍にその無防備な姿をさらしている。


「総司令部が!」


フォレスタル軍よりもメルキド軍の軍団長達の方が冷静さを欠いていた。ワイバニア軍の精鋭達とにらみ合いを続けていたメルキド軍であったが、第二軍団の裏切りと崩壊そして総司令部の危機を見て浮き足立った。


たとえ、わずかな隙であっても、それを見逃す未熟な軍団長は先陣には存在しない。陣形の乱れを見たマレーネ、リピッシュ、ヒッパー、三人の熟達した技量を持つ軍団長は申し合わせたかのようにメルキド軍に攻撃を開始した。ヒッパー率いるワイバニア第八軍団はタワリッシの総司令部とローサ・ロッサ率いるメルキド軍第五軍団の間を分断し、横陣に陣形を転換したリピッシュはメルキド軍の右翼に圧力をかけ、マレーネ率いるワイバニア第二軍団はラシアン・フェイルード率いるメルキド軍第六軍団の左前方から攻撃を加えた。ワイバニアの誇る三軍団長は、メルキド軍三個軍団を逆包囲した。


「!」


「しまった!」


「……おのれ!」


メルキド軍の三人の軍団長はそろって声を上げたが、それだけでは何の解決にもならなかった。ワイバニアの軍団長達が敷いた鶴翼の陣形は芸術とたたえられるほどに完成されていたのである。ローサ・ロッサもディサリータも、ラシアン・フェイルードも額面通りの兵力を動かすことが出来ず、防戦するしかなかった。予備兵力もなく、中央部を崩され、メルキド軍はワイバニア軍に抗する力が失われつつあった。

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