第二章 戦乱への序曲 第二話
最初にやり玉に上げられたのはジークムントの戦いだった。
「無様だな。ここまで龍騎兵を失い、敵に弄ばれるとは。栄光ある十二軍団長にあってはならない振る舞いだ」
ワイバニア第一軍団長のハイネ・フォン・クライネヴァルトが言った。十二軍団長の主席でもある美麗な青年は劣等生を見下すかのように映像に視線を向けた。
「あはは! そうそう! こんなにあっさり負けちゃって、ばっかみたい! おつむがゴリラ並だからそんなことになるんだよ!」
十二軍団長の中でひと際派手な格好をした第十一軍団長のザビーネ・カーンが笑う。
「まったく、おつむどころか全身砂糖菓子のような娘っ子にひどい言われ様だねぇ。ジークムント」
第九軍団長のマルガレーテ・フォン・ハイネマンはカラカラと笑い声を上げた。
「何? そんなだから、嫁にいき遅れるんだよ。オバサン」
「あぁ? あたしゃ、まだ若いんだよ。それにいき遅れてるんじゃないよ。嫁にいかないだけさね。あたしに釣り合ういい男がこの国には少ないからねぇ」
今年三二歳になるマルガレーテは机を叩くと、八つ下のザビーネにこめかみに青筋をたてて抗議した。
「まぁまぁ、二人とも」
第三軍団長のヨハネスが二人を抑えた。
「ジークムントには悪いが、フォレスタルの戦術に翻弄されたのは動かし様のない事実だ。それは認めなければならないが、今回我々が集められたのは我々三人を吊るし上げるためだけではないのでしょう? 左元帥閣下」
ヨハネスの問いに、左元帥のハンスは頷いた。