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第六章 ミュセドーラス平野大決戦! 第百三話

「まったく、たまったものではありませんわ」


フォレスタル第四軍団本陣、集結した四個大隊を背後にマーガレットは腕組みした。密な作戦を立てて、戦いに臨んだにも関わらず。斜面の戦いにおいて、第四軍団の出番はなかった。言わば、遊兵になってしまったことが、マーガレットにとっては不満だった。


「しかたありません。殿下とアルレスハイム連隊長だけで勝ってしまわれたのですから。もともと、我々は敵の予備兵力と戦わねばならなかったのです。戦っていれば、きっと後々の戦いがやりづらくなったでしょう」


マーガレットの後ろに控えたフォレスタル第四軍団参謀長スタンリー・ホワイトは言った。


「さしあたっての危機は回避しましたが、今度は我々が急がねばなりません。攻撃のタイミングを逃してしまっては、元も子もありませんから」


「わかっていますわ。それぐらい。ですから、騎兵一個中隊を割いているのでしょう?」


マーガレットは本陣に戻る直前に索敵のため、騎兵一個中隊をミュセドーラス平野侵入口に差し向けていた。ワイバニア軍の侵入を可能な限り詳細に調べるためである。すでに第一次偵察の騎兵がマーガレットのもとに報告にやってきていた。


「敵、進軍中。侵入口至近なり」


もはや、一刻の猶予もなかった。敵はすぐそこまで達しているのだから。マーガレットは報告書をスタンリーに手渡すと、第四軍団に移動開始を命じた。騎兵、機動歩兵、弓兵の混成大隊が、ミュセドーラス平野北端に向けて移動を始めた。


同時刻、ミュセドーラス平野南方、ハイネ・フォン・クライネヴァルト率いるワイバニア第一軍団はヴィア・ヴェネト率いるメルキド軍第二軍団と対峙していた。整然と隊列を整えた両軍の兵士達が、微動だにすることなく戦場にそのますらおぶりを見せつけている。ともに、練度と士気の高い精兵だけがなせる業だった。


その様子をワイバニア軍第一軍団長ハイネ・フォン・クライネヴァルトは馬上から眺めていた。


「大した兵士達だ。エルンスト。我が軍の上位軍団と優るとも劣らぬ」


やや饒舌だ。エルンストは年少の上官を見て思った。先立ってフォレスタル最強の第一軍団を破ったからか、それとも再び上将と兵を交える喜びにひたっているからなのか、エルンストはわからなかった。思索を巡らす彼を伝令兵が邪魔をした。思案の途中を邪魔されるのは不愉快きわまりないことだったが、戦闘中であるからには仕方がない。伝令の報告を聞いたエルンストは我が耳を疑った。


「それは、本当か?」


「はい」


「どうした? エルンスト」


ワイバニア第三軍団敗北の報がハイネのもとに届いたのはこのときである。



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