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第六章 ミュセドーラス平野大決戦! 第九十九話

「第三軍団が!」


シラー率いるワイバニア軍第三軍団が壊滅する様を見たワイバニア第七軍団長ベティーナ・フォン・ワイエルシュトラスは叫んだ。


「すぐにシラーの生存を確認しなさい! 急いで!」


手持ちの騎兵の十分の一を割いてでも、ベティーナはシラーの安否確認に努めた。


フォレスタル第三軍団とワイバニア第七軍団の戦い、戦況はワイバニア軍有利に傾いていた。ベティーナは情報が戦いの帰趨を握るということをよく理解していた。そのため、彼女は機動戦力として有力だった騎兵を全て戦場の情報収集に回し、敵の攻撃の穴を探したのである。勇猛をもって知られるフォレスタル第三軍団もベティーナの戦い方に手を焼いた。攻撃を繰り返しても、その度に逃げを打たれ、かつその攻撃の急所を突いて、こちらの戦意をくじくのである。ウィリアムにとって、相性が悪い敵だった。


「敵の指揮官はずいぶん目がいいんですねぇ……。軍団長の馬鹿の一つ覚えがよくわかってる」


フォレスタル第三軍団参謀長エミリア・バスカヴィルはうんうんとうなづいた。ウィリアムは重装歩兵と騎兵による突進攻撃を得意とする軍団長である。敵が明確な攻撃の意志を持ち、さらに同数、同種の兵力をぶつけてきたときに彼の戦術が生きるのであって、ベティーナのように、敵軍の攻撃を回避しつつその隙をついて攻撃できるあいてでは、遅れを取ることが多かった。


「うるさいぞ。エミリア……。だれが、馬鹿の一つ覚えだ!」


「何回も重装歩兵と騎兵を交互に使うからですよ。もうへとへとじゃないですか。すぐに後退させて、機動歩兵大隊の攻撃に任せるんです」


「わ、わかった」


エミリアの案を受け入れたウィリアムはすぐに実行にうつした。エミリアは分隊単位まで歩兵大隊を分割し、有機的な兵力運用のシステムを作り上げた。整然と、しかし、隙間なく配置されたその戦力分布は、ベティーナが入り込める余地すらなかった。


「さっきと戦い方が変わったわ。もしかして、これが第三軍団の本当の戦い方かしら」


ベティーナはあごに指をあてた。フォレスタル第三軍団の戦いは戦端が開かれてから現在に至るまでの戦い方とまるで正反対の形をなしている。何度も突進攻撃をかけたのは、突撃しかないとこちらに印象づけるためではないのか。


アメーバのようにじわじわと前進する敵軍にベティーナは疑念を抱きはじめていた。


「……と、敵が疑問を抱いてくれればいんですけどね」


エミリアは机に紙を広げて、今回の作戦を上官に説明した。


「なるほどな。敵にこちらの出方を読ませないようにする訳か」


「こう言う場合、いくつも陣形を変えるよりも、二者択一で相手に選択肢を与えた方が心理的なプレッシャーは大きいんです」


「どちらにしても、大ばくちという訳だからな。それで、これからどうする?」


「これで終わりです」


「は?」


ウィリアムは目を見開いて参謀長に言った。エミリアはまるで意に介すこともなく続けた。


「ここで重要なのは、敵軍に斜面を登らせないことと、最後方の第四軍団を守ることです。我々はそのどちらの条件も満たしています。ですから、この戦い、もう敵軍の撃破にこだわることはないんです」


「たしかに……」


頭では理解できても、心と体は納得できない。彼の聞き分けのよさも、限界値ぎりぎりまで達していたのである。

すみません! 連載再開です!


週に一回の更新ペースで頑張りますです! はい。

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