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第六章 ミュセドーラス平野大決戦! 第九十三話

「大した攻撃だ。スチュアート隊長の攻め方ではないな。おそらく、クリス・キートン副隊長の戦術だろう。スチュアート隊長には人望やカリスマ性では及ばないが、戦術家としては非常に優秀だ。彼と組ませて正解だったな」


クリスの戦術の手際の良さをみたヒーリーは独語した。クリスがいなければ、シラーはここまで早く撤退を決断するにはいたらなかったし、第五軍団は窮地に陥っていたことだろう。


「参謀として欲しいところです。龍騎兵にしておくには勿体ないわ」


メアリはヒーリーに言った。クリスは龍騎兵としてよりもむしろ参謀向きの人間であったと言える。組織を作り上げるという力は未知数だったが、彼の作戦立案能力はヒーリーもメアリも認めるところだった。


クリスは龍騎兵大隊に配属される前は騎兵大隊、機動歩兵大隊を転々としていた。


「いやぁ、わたしはどうやら上司に好かれない性格でして」


転々とした理由を問われる度、クリスは頭をかいて言った。しかし、数多くの兵科を経験した彼は、それぞれの兵科の長所と短所を理解し、独創的な作戦を立案できる能力を手に入れていた。その能力が、今回の斜面の戦いでいかんなく発揮されたのである。


騎兵が馬を操らねばならないというその性質上、盾を持たず、弓矢による防御が薄いという弱点を彼は見事に利用したのである。


ヒーリーは攻撃を終えた龍騎兵大隊に即時退却を命じた。一撃離脱。これが、龍騎兵運用の基本である。空陸の戦いは終わりを告げたが、歩兵同士の戦いでは、フォレスタル第五軍団とワイバニア第三軍団は未だ激戦の最中にあった。


フォレスタル機動歩兵が攻め、ワイバニア歩兵が守る。戦いの大勢は変化していないが、ここに着て、ワイバニア歩兵の防御に粘りが増してきた。フォレスタル歩兵が全力で攻撃を仕掛ければ仕掛けるほど、前線の兵力にわずかばかり不均衡が生じてしまう。ワイバニア軍は兵力が疎になるポイントを狙って、ピンポイントで攻撃を仕掛けてきたのである。


「ここにきて、ワイバニア軍の防御が強固になってきたわ。どうする? ヒーリー」


「おそらく、前線に軍団長自らが出馬してきたのだろうね。不動の第三軍団を束ねる男が出てきたんだ。生半可な攻撃では突き崩せないだろう。……後衛の敵軍が後退しているのが見えるな。龍騎兵大隊が敵に大損害を与えたからね。斜面の攻勢はほぼ断念したと見るべきだろう。となると、敵の目的は味方が退却する時間を稼ぐことにある。殲滅する必要はないし、適当にこちらも戦ってやればいい」


「その適当が一番問題なのよ」


「そうだな。力を抜くと、敵が再び攻撃を再開するかもしれない。アルレスハイム連隊を出して、左右を固める敵の弓兵に揺さぶりをかけるとしよう」


目下、フォレスタル第五軍団にとって脅威だったのは、左右から間断無い射撃を行なう敵の弓兵だった。ヒーリーはアルレスハイム連隊の機動力をもって、敵に側面攻撃をかけようと考えたのである。

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