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第六章 ミュセドーラス平野大決戦! 第九十一話

「どうした? キートン」


アレックスは龍騎兵大隊副隊長クリス・キートンに尋ねた。


「単なる急降下攻撃では、いたずらに戦力を浪費するだけに終わると思います」


「貴官もそう思うか?」


「はい」


アレックスはクリスの言葉に不快感を抱いたが、すぐに頭の外に追いやった。クリスの言うことは正しい。敵もそう簡単に損害を与えさせてくれないだろう。中隊規模の損害は覚悟しなければならない。そのことをアレックス自身百も承知していたためである。


「では、どうするというのだ?」


「急降下突撃の案を否定するわけではありません。要は急降下をやりやすくすればよいのです」


クリスはアレックスに自分が立てた作戦を話した。アレックスは思考の柔軟さには欠けるが、高潔で公正な軍人である。部下の作戦案を一蹴するような人間ではなかった。


「なるほどな。そいつはいい。キートン、それでいこう」


「はい!」


アレックスは隊列を組み直し、大隊をワイバニア軍騎兵大隊上空に向けた。


眼前に龍騎兵大隊の姿を見たワイバニア軍第三軍団騎兵大隊長ハインツ・ヴァイツベッカーは部下に連射弓掃射態勢を命じた。密集していた騎兵がさらに距離と幅を詰める。


「さぁ、来い。フォレスタルの龍騎兵。オセロー平原の再現だ!」


龍の雲に狙いを定めた騎兵が照準器ごしにつぶやいた。しかし、フォレスタル軍は彼らの思うように動かなかった。数十秒後、彼らの頭上に雨が降った。それは恵みをもたらす雨ではなく、血と死をもたらす矢の雨だった。


「なんだよ!? これは!」


「ひぃ!」


ワイバニア騎兵にとっては地獄以外の何ものでもなかったはずだ。突き刺さった矢の痛みに軍馬は主を振り落とし、騎兵の五体は愛馬の蹄に無惨に踏みくだかれた。一方では、幾本の矢に串刺しにされた騎兵が馬上でこと切れている。叫びと悲鳴を馬のいななきがかき消す。秩序など、百年も前に忘れてしまったかのような凄惨な情景がそこにあった。

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