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第六章 ミュセドーラス平野大決戦! 第八十話

「歩兵大隊、もっと速度を上げろ!  陣形が多少崩れても構わん」


第七軍団よりも先にフォレスタル軍の攻撃を開始したワイバニア軍第三軍団長マンフレート・フリッツ・フォン・シラーは陣形の小規模な変更を命じた。歩兵大隊を前衛に騎兵大隊を両翼に従えた魚鱗の陣形はやや前方に伸びながら、フォレスタル軍陣地に向けて前進し続けていた。


「前方に陣形が伸びると、敵に攻撃の隙を与えることになりませんか?」


副官のヘルマンがシラーに尋ねたが、シラーは首を振った。


「敵の優位性は、その兵力もだが、斜面に陣地を構えていることだ。我々の位置、動向を一望できるばかりか、斜面を利した戦術が可能だ。そのようなメリットをわざわざ捨ててくれるならありがたいが、そこまで親切にしてくれないだろう。となると、我々は斜面を登る他はない。先頭は速度が下がるから、陣を伸ばして置かないと、より不格好な陣形を形成することになる」


「……なるほど」


ヘルマンは上官の考えに頷いた。外見によらず、シラーは智に傾いた将だと言える。上位軍団長の中では、知勇攻守最もバランスのとれた軍団長だった。専用馬車の作戦室の中で指揮をとっていたシラーはおもむろに立ち上がった。


「軍団長、どちらへ?」


「そろそろ軍団が斜面に着く頃だろう。前線に出て、指揮しなければならない」


シラーは笑うと、馬車から飛び降りた。司令部大隊付の騎兵がシラーの愛馬を連れてやって来る。シラーは馬に飛び乗ると、剣を引き抜いて宣言した。


「ワイバニア第三軍団の将兵へ! 戦いの時はきた! 他の上位軍団に遅れを取るな! 敵は強い。決して油断するな!」


シラーは馬を走らせた。ミュセドーラス平野は平野とは名ばかりの盆地に近い地形である。フォレスタル軍の様子がよく見える。翡翠色の旗がゆっくりと陣形を形成していく。見たことのない陣形だ。方陣に近いが、不可解な形をしている。ところどころ歯抜けた長方形。


「相手はフォレスタル第五軍団だ……。何を仕掛けて来るかわからんぞ。斜面に差し掛かったら、一気に登れ!」


ワイバニア第三軍団を見下ろす旧フォレスタル軍第四軍団陣地に愛騎から下りたフォレスタル軍第四軍団参謀長スタンリー・ホワイトはいた。


「おぉ、間に合いましたね。敵はまだまだ斜面に登り切っていない。アーチボルト君、準備は?」


「はい。参謀長の指示通り、すでに……」


第四軍団弓兵大隊長アーチボルト・フェリスは静かに応えた。プランB。それはスタンリー・ホワイトが提案した遅滞戦闘作戦である。フォレスタル軍の作戦が敵軍に悟られる可能性がある。準備が整う前に斜面に攻め込んだ敵を寡兵で迎撃するというのが作戦の骨子だった。ヒーリーにこの作戦を報告する前にスタンリーは独断で負傷兵に擬装した一個弓兵大隊と一個攻城兵中隊を旧第四軍団陣地待機させ、敵に備えていたのである。


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