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第六章 ミュセドーラス平野大決戦! 第七十六話

シラーの命令よりも少し後、彼からの親書を読んだ第七軍団長ベティーナ・フォン・ワイエルシュトラスは指揮座から立ち上がると、親書を握りつぶした。


シラーの言を無視した訳ではない。ベティーナは敵の意図を看破できなかった自分自身に腹を立てていた。


「数ヶ月前までは、参謀をしていたのに。我ながら自分自身が情けないわ。どっちが愚考だったか、今となっては……。アルトゥル」


ベティーナは副軍団長の名を呼んだ。


「はい」


「敵はフォレスタル第三軍団よ。全軍に直ちに戦闘準備を。……それから、ごめんなさい。さっきは失礼な物言いをしてしまったわ。結果としてあなたの方が正しかったわ」


副軍団長は目を伏せ、配下の幕僚と伝令に手配すると、少しの間ベティーナと二人きりになった。


「軍団長、あれしきのことでわたしの忠誠が崩れることはありません。どうか、皆の面前でご自分の過ちを認めないでください。軍団長は、いつでも我らにとって、正しい存在であるのですから」


「ありがとう。でも、わたしは……」


「いえ、あなたは尊敬と忠誠を尽くすに値する人物です。地方軍の万年中隊長に過ぎなかったわたしを正規軍の副軍団長に取り立ててくださいました。感謝の言葉もありません。アルトゥル・フォン・シュレーゲル。全力を賭して、あなたをお助けいたしたく思います」


「ありがとう。副軍団長……。すぐに戦いが始まるわ。あなたも準備を怠らぬように」


アルトゥルは軍靴のかかとを揃え、背筋をのばすと、作戦室を辞した。作戦室に一人残った。ベティーナは机に広がった作戦室に視線を落した。


「苦しい戦いになりそうね……」


第七軍団を示す駒が窓から差し込む日に当たり、陰って見えた。星王暦二一八三年七月十七日午後、ミュセドーラス平野の東方斜面の戦いがついに幕を開けようとしていた。


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