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第一章 オセロー平原の戦い 第三十二話

「安らかに眠れ……。ワイバニアの武人よ」


アレックスはそういうとしばらく動かなかった。いや、動けなかった。ブルーノを倒した代償は大きく、彼は右腕の肩の肉をごっそりえぐられていた。彼の右腕からおびただしい量の鮮血が吹き出し、雨を降らすようにオセロー平原の大地へとおちていった。彼は一番近くにいた龍騎兵に敵将の死と自分自身の状態を知らせ、指揮を副隊長に委ねるように伝えるとヒーリーの陣に向かって飛んでいった。


フォレスタル龍騎兵隊本隊とワイバニア龍騎兵隊が激戦を繰り広げている中、フォレスタル軍龍騎兵別働隊は地上のワイバニア歩兵に側面からなだれこんだ。


ヒーリーの策略によって、ワイバニア軍の陣形は伸びきっており、そこを無防備な側面から攻撃を受けたためワイバニア軍は総崩れになった。


「龍騎兵は歩兵に勝つ」世界の大原則はワイバニアにもフォレスタルにも等しくあてはまる。戦場はワイバニア軍の兵士の死体で埋め尽くされた。


「もう勝敗は決した。早く退け……ジークムント」


ヒーリーは心の底から願った。将である限りは敵を倒さなければならない。殺さなければならない。しかし、虐殺者になる義務はない。敵を殺し尽くしてきたヒーリーだったが、次第に不愉快なジレンマに陥っていた。


味方を活かすために敵を殺す。しかし、敵を生かせば、敵の代わりに味方を殺す。当たり前のことであるが、どちらに転んでも殺人者に変わらないのである。軍人である限りはヒーリーはこのジレンマと永遠に戦っていくことになるだろう。


「軍団長、勝敗はもう決しました。退却を!」


同じとき、ヒーリーと同じことを考えたものがいた。ジークムントの副官のクラウスである。クラウスは軍団長から怒りを買うのを覚悟の上で意見を具申した。


「俺が負けたというのか……たかだか四〇〇〇の小勢に……いや、退かん! まだ、まだ兵力はある! このまま突撃だ!」


「いいえ……我々にはもはや退却出来るだけの力があるかどうか……」


「黙れ!……俺は認めん!」


「軍団長!」


「黙れと言うのに!」


ジークムントはさやに入ったままの剣でクラウスを殴りつけた。ジークムントの陣中にめきと何かが折れる音がした。

ジークムントが見ると、殴りつけた副官の右腕が普段とは逆の方向を向いていた。クラウスは右腕と引き換えにジークムントの打撃を受け止めていた。


「いいえ……。この腕が折れようと、足がもげようと、閣下に聞き入れてもらうまでは黙りません!」


一歩も引かぬ覚悟を決めたクラウスはきっとジークムントを見据えた。


「軍団長。私も副官殿の意見に賛成いたします。戦線も至る所で崩壊し、我が軍は壊滅しつつあります。何卒、退却のご命令を……」


参謀長のシュタイナーもまた、クラウスに同意し、ジークムントに退却を促した。


「ぬぅ……」


ジークムントはなおも退却をためらっていたが、そのとき、ワイバニア軍にとって敗北を決定づける情報が入った。龍騎兵隊隊長ブルーノ・フォン・ノイベンシュタインの戦死である。

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