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第六章 ミュセドーラス平野大決戦! 第五十七話

シラーの要請を受け取ったワイバニア帝国右元帥シモーヌ・ド・ビフレストは直ちに予備兵力である第九軍団の投入を決定した。


「どいつもこいつも役立たずめが!」


相次ぐ敗北の報にワイバニア帝国皇帝ジギスムント・フォン・ワイバニアは激怒した。


「軍団長どもは余の顔に泥を塗るのがよほど好きと見える。不忠者めが!」


玉座の傍らにある台に置かれたぶどう酒の瓶をつかんだジギスムントは瓶に口をつけ、一気に酒を飲み干した。


「これも戦いのうちよ。常に勝ってばかりでは面白くないわ」


怒りに顔を紅くする皇帝を一顧だにせず、シモーヌは戦力の再編に取りかかっていた。情報撹乱を主任務とし、謀略家としての面が大きく印象づけられる彼女ではあるが、軍政のナンバー2にいる手腕は確かなものだった。彼女はシラーらが現場判断によって任命した第十一軍団長リヒャルト・マイヤーを追認すると改めて第十二軍団長に任命、マイヤーの指揮した第十一軍団残余を正式に第十二軍団としたのである。マイヤーの第十二軍団長任命と同時にヴィクター・フォン・バルクホルンを第十一軍団長に昇進させ、彼の率いる軍団を新第十一軍団とした。


これは指揮下の兵力の差と、彼らが軍団長であった期間を勘案したためである。新第十二軍団は補給を受けた後、新第十一軍団に一時的に組み入れられることになるだろう。


相次ぐ敗北と苦戦にいらだっていた皇帝ジギスムントもシモーヌの案を容認した。ジギスムントも政治家、軍人としても一定以上の判断力は有しており、感情と政務、軍務を完全に切り離すことが出来たのである。


一方で軍団の再編にはかなりの時間を要するため、フォレスタル・メルキド連合軍には唯一と言っていい勝機が現れたのである。


ミュセドーラス平野南方斜面、連合軍総本陣の装甲馬車の屋根の上からこれを見たメルキド軍大将軍タワリッシは背後の幕僚、伝令に高らかに言い放った。


「連合軍全軍。龍の翼を閉じよ! 攻撃開始!」


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