第一章 オセロー平原の戦い 第三十一話
「隊を二手に分ける。第一から第四中隊は俺について来い。龍騎兵を片付ける。第五から第十中隊は敵歩兵を片付けろ!」
フォレスタル軍龍騎兵隊長のアレックスは部下達に言った。
「迎撃だ! 本隊に龍騎兵を近づけさせるな!」
ワイバニア軍龍騎兵大隊長ブルーノ・フォン・ノイベンシュタインは即座に迎撃の命令を下したが、フォレスタル軍の方がさらに動きが早かった。アレックスたちはワイバニア軍よりも高度を取ると、隊伍を組んで急降下し、ワイバニア兵に襲いかかったのである。
「全員、回避ぃーっ!」
迫り来る翡翠の龍騎兵の群れを見たブルーノは声を限りに叫んだが、間に合わなかった。第十軍団の精鋭ともいえる龍騎兵は、あるものは剣に身を両断され、あるものは龍の顎に食いちぎられ、地に落ちていった。
それでもブルーノが狂躁状態にある部下を束ね戦線離脱できたのは、彼の能力の高さ故だろう。しかし、彼の力をもってしても、フォレスタルの猛攻は止めようもなく、ブルーノが後ろを振り向いたとき、龍騎兵隊はその戦力の三割を失っていた。
「あいつが隊長か!」
アレックスは急降下からの身を翻し、ブルーノに狙いを定めるとまっすぐ愛騎を敵隊長に向けた。
「奴が隊長か!」
ブルーノは突進して来たアレックスを見つけると剣を抜いた。アレックスもブルーノに合わせて剣を抜き、そのままブルーノめがけて振り下ろした。ブルーノはアレックスの剣を受け、二人は二合、三合斬りあった。
「私はフォレスタル近衛騎兵隊長、アレックス・スチュアート。貴公の名は?」
剣を合わせながらアレックスは自ら名乗りを上げた。
「私はワイバニア第十軍団龍騎兵大隊長、ブルーノ・フォン・ノイベンシュタイン。”フォレスタルの蒼き閃光”に出会えるとは武人として、光栄の至り。」
「では、いざ!」
アレックスは愛騎の背にマウントされたスピアを手に取った。
「尋常に……」
ブルーノもまた、スピアを手に取り、姿勢低く構えた。
「勝負!」
二人は同時に叫び、突進した。わずか一瞬、そして一撃で勝負はついた。
「見事……」
ブルーノの腹にスピアが突き刺さっていた。ブルーノは腹にスピアを刺したまま、バランスを崩し、地表に向かって落ちていった。