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第六章 ミュセドーラス平野大決戦! 第三十話

「マイヤー次席参謀、貴官を臨時の第十一軍団長に任命する」


シラーはこぶしを振るわせ、微動だにしないアルバートを見ると、マイヤーに言った。


「……しかし、わたしは、左右両元帥の推薦も、皇帝陛下の任命も受けておりません」


「問題ない。ワイバニア軍規一〇二条第五項に、戦闘中に軍団長が失われた場合、四名以上の軍団長の承認があれば、筆頭軍団長の名のもとに、軍団長を任命出来る特例がある。……それで、先輩?」


シラーはベティーナに視線を向けた。


「わたしは異論はないわ。上位軍団長の判断ですもの。逆らえないわよ。……ヴィクター君は?」


ベティーナは冗談まじりに笑うと、ヴィクターに同意を求めた。


「僕も異論はありません。うちの参謀長も同意見のようですし」


ヴィクターは参謀長のローレンツに振り向くと、ウィンクで彼を制した。ローレンツ自身もシラーの意見に賛成だったが、彼は彼なりに、ヴィクターに翻意をもとめるベきだと考えたのである。ヴィクターもまた有能な参謀長が何を言い出すかを十分に理解しており、それを知った上で機先を制したのだった。


「で、その、クライネヴァルト軍団長は……」


軍議の場にいた全員がハイネを見た。腕を組んだワイバニアの至宝は周囲と傍らのエルンストを見ると、小さくため息をついた。


「ここでわたしが許さなかったら、皆、わたしを悪者と思うだろうな……。お前も大した食わせ者だ。マンフレートよ」


親友の遠慮のない言葉に、シラーは苦笑した。


「追撃戦で敵が諦めるタイミングをはかっての弓兵射撃、通常の部隊には及ばぬものの、それに準ずるレベルで混成大隊を組織した運営能力。どれを取っても優秀だ。それに、貴公は我々四人の誰よりも軍歴は長い。貴公には軍団の長たる資格がある。リヒャルト・マイヤー次席参謀を、ワイバニア軍規第一〇二条第五項に基づき、ワイバニア帝国軍主席軍団長ハイネ・フォン・クライネヴァルトの名において、第十一軍団長に任命する」


周囲にざわめきが起きる。ハイネは公正な人間である。軍団長の資格がない者を軍団長に任命することは断じてしない。しかし、マイヤーは優秀だった。シラーの助力なくとも、ハイネはマイヤーを遅かれ早かれ軍団長に任命しただろう。マイヤーは改めてハイネら同輩となるべき軍団長にひざまづいた。


「はい、つつしんで拝命します」


星王暦二一八三年七月十七日、第十一軍団に新たな軍団長が誕生した。

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