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第六章 ミュセドーラス平野大決戦! 第十五話

ミュセドーラス平野入り口、その脇に小さな渓谷がある。その幅はわずか数百メートルといったところだろう。大軍の運用など及びもつかない狭く小さな渓谷だった。


物陰に隠れて、アルレスハイム連隊五個中隊五〇〇名が息をひそめていた。


「ふふ」


アルレスハイム連隊第二機動歩兵中隊長アルバート・エイムズが笑った。


「どうした? 急に」


隣にいた第一機動歩兵中隊長アレックス・コーディが尋ねた。最新式の連射弓を構えた僚友は再び笑うと、僚友に言った。


「俺たちもずいぶん成長したのかなって。足手まといの第五軍団の中でもえり抜きのはみ出しものの俺たちが、一個軍団を相手に戦うんだからさ」


「あぁ」


アレックスは、短く返事をした。エイムズはアレックスを見た。士官学校の同期だったアレックス。勇気と侠気にあふれ、後輩、同輩にも頼られている。そのアレックスが初めて震えている。自分もだ。顔は笑っているが、のどが震えているのが分かる。ちょっとでも刺激を与えれば、野獣のような軍団はすぐにでも襲いかかってくるだろう。かたかたと揺れるスコープをエイムズはのぞいた。


ふと、連射弓の震えが止まった。いや、止められたのだ。アレックスとエイムズが見上げると、アンジェラが二人の連射弓を上から支えていた。


「……連隊長」


「大丈夫だ。お前たちはわたしが育てた精鋭中の精鋭だ。自信を持て」


風と共にアンジェラの金の髪がふわりと浮かび、土煙の中に甘い香りが漂う。アンジェラが常につけている香水の香りだ。機動歩兵中隊二〇〇人を率いる若き隊長たちは、彼らの前に立つ美しき武人の姿に強く引きつけられた。


「さぁ、やろう」


「ふふ、そうだ。やろう!」


エイムズとアレックスは配下の兵士たちに指で合図した。狭い渓谷の中に金属音が響く。決して小さくはない音だが、第一軍団の激闘の轟音でかき消されることだろう。


アルレスハイム連隊別働隊五〇〇はじっと獲物がかかるのを待っていた。

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