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第五章 決戦! 第七十二話

エリザベスがこの場にいたら、高笑いしていたであろう。ことはエリザベスの思う通りにすすんでいたのだから。


エリザベスは隊列にあからさまに隙を見せるように心がけていた。外の護衛は少なく、そして、隊列の速度は遅く。あまりに見え透いた罠ではあるが、それ故に効果がある。敵が勇んで攻めてくれば、経験不足と弱兵の証明である。一気に撃滅すればよい。逆に経験豊かな敵であれば、警戒して出てくることはない。それでも、出てくるのであれば……。


エリザベスは戦う前から、既に自分たちが最も有利になる状況を作り上げていたのである。敵将グレゴールをして、「食わせ者の血脈」と言わしめるフォレスタル一族。エリザベスもまた、その名を背負うにふさわしい智将だったのである。


もっとも、当の本人は、自分の馬車の中でのんきにキセルを吹かしていたのではあるが。


攻めるか、攻めざるか。ベーレトは決断に迫られていた。獲物は大きい上に、ミュセドーラス平野からも火の手が見える絶好の位置。時期も本隊が士気を上げるには最良だろう。だが、彼の勘は時期、位置に反して「否」と警鐘を鳴らし続けている。ベーレトは生唾を飲み込んだ。


「どうしますか? 隊長」


ツェルナーはベーレトに尋ねた。これは雁部隊全員を代表する言葉だった。ベーレトの号令があれば、すぐにでも、脇街道を血の海にすることが出来る。それだけの技量と練度を部下達は持っていたし、その部下達も今まさに爆発寸前だった。


勘を信じるか。部下を信じるか。ベーレトは目を閉じた。ひとつの感覚を閉じると、他の感覚が研ぎすまされてくる。部下達の息、鼓動、そして何より、自分自身の昂りをベーレトは全身で感じていた。


ベーレトは目を開くと、右手を高く掲げた。彼らが待っていた時が来たのだ。ベーレトは掲げた右手を一気に振り下ろした。


「全軍、突撃!」


星王暦2183年7月14日、ワイバニア帝国軍特務部隊「雁」はフォレスタル軍補給部隊に一斉突撃を敢行した。

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