表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
272/473

第五章 決戦! 第六十七話

第五軍団司令部、軍団長専用の装甲馬車の中にしつらえた作戦室で、ヒーリーは目を覚ました。


「俺は……?」


「目を覚ましたか? ヒーリー」


椅子をいくつも並べて作った簡単なベッドに寝かされたヒーリーに、兄エリクはさわやかに言った。


「兄上……」


「間が悪かったな。よりによってメアリと一緒の時だとはな。ピット卿もさぞ、激怒するだろうな」


「茶化さないでください。兄上……。それは?」


ヒーリーはアストライアの入った鞄に目を向けた。


「お前の新しい魔術銃だ」


「そんな。だって、ラグは……」


「ラグは今眠りについている。だが、その前に彼はもう一丁の魔術銃を完成させていたんだ。本当は、ポーラに渡して欲しかったのだが……」


エリクは足元の鞄に視線を落とした。ヒーリーは顔を天井に向けると、兄に言った。


「兄上、その銃。アストライアは受け取りませんよ。受け取るのは、ポーラからだ」


「そうだな。立てるか? 疲れているのは分かっているが、まだ、お前の力が必要だ」


「えぇ、もう大丈夫です」


ヒーリーは、兄に微笑むと、ゆっくり体を起こした。ちょうどそのとき、作戦室の扉が開いた。ゆっくりと開いた扉の陰から、ヒーリーのもっとも会いたがっていた人が姿を現した。


「ノックが欲しかったね。ポーラ」


エリクはポーラに目を向けた。とがめているが、怒ってはいない。そんな表情だった。


「すみません、エリク様」


「謝るのは俺ではない。そうだろう? ポーラ」


エリクはヒーリーを立たせると、勢い良く背中を叩いた。エリクはさらに足元の鞄を持つと、ポーラにそれを手渡した。


「これを渡すのは、君の仕事だ。ポーラ。弟を頼む」


「頑張れよ。ヒーリー」


作戦図を見ながら、エリクはつぶやいた。戦いに対して、ヒーリーの不器用な恋に対しての声援だった。空前の作戦を前に、兄にはそれくらいのことしか出来なかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ