第一章 オセロー平原の戦い 第二十三話
「気づかれたか? 撃てぇ!」
矢の雨が一斉に残りのワイバニア龍騎兵に降り注いだ。ワイバニア攻撃隊は瞬く間に一〇〇〇近くの矢を受け、地表に叩き付けられ全滅した。
「第二陣、バリスタ、上空弾幕斉射!」
第二陣を指揮していた、弓兵大隊長の一人、アーサー・ワットが配下の部隊に命令した。
バリスタは大型の矢を打ち出す攻城兵器であるが、弓兵隊が用いるそれは異なっていた。馬、あるいは人力で引けるように車輪が取り付けられ、十数本の弓矢をより遠く、より早く連射することが可能な連射弓として使用されていた。
第二陣に配備された三〇台のバリスタから高速で連射された五〇〇本の矢は第一射から逃れた二〇騎に容赦なく襲いかかった。このとき、彼らは急降下攻撃をかけるべく上昇中で、無防備な腹部を弓兵隊にさらしており、その多くが避けることも出来ずに矢を受けていった。矢の直撃を受けた六騎が脱落、墜落し、残り一四騎も満身創痍になりながら、ヒーリー軍本陣直上、ヒーリーの頭上に到達した。
ヒーリーの本営にいたフォレスタル兵士が叫んだ。
「殿下、敵騎直上!」
「見事だ……。ワイバニア龍騎兵……」
ヒーリーは傷を負いながらも本陣深くに切り込んだ頭上の敵龍騎兵に賞賛の言葉を吐いた。
「全騎、抜剣! 目標、敵司令官、雑魚に構うな!」
全身に矢を受け満身創痍のワイバニア龍騎兵は剣を抜き、最後の急降下攻撃を開始した。ワイバニア兵が降下を開始した瞬間、ヒーリーは翡翠色のマントをひるがえし、腰のホルスターから青と銀の魔術銃、カストルとポルックスを抜いた。
「殿下!」
後衛の弓兵隊を指揮していたホーソンがヒーリーめがけて降下する龍騎兵を見て叫んだ。
「構うな!」
ヒーリーはそう言うと、二丁の銃を頭上の敵騎めがけて構え、魔術銃の引き金を引いた。甲高いうなり声と共に十三発の空気を裂く音が聞こえた。
「ぐぁ……」
ヒーリーの弾丸は翼竜の体のを貫き、絶命させた。コントロールを失った翼竜は次々と地面におちていった。
「最後だ……」
ヒーリーは最後の生き残りをめがけ、引き金を引いた。しかし、弾丸は翼竜に当たることなく空しく空を切った。
「外した?」
ヒーリーの間近に復讐に燃え、その口を開いた龍の姿があった。
「!」