第五章 決戦! 第六十二話
星王暦2183年7月14日、フォレスタル、メルキド連合軍後衛、ヒーリー・エル・フォレスタル率いる第五軍団の野戦指揮所に第五軍団アルレスハイム連隊連隊長、アンジェラ・フォン・アルレスハイムが訪れていた。
「お呼びですか? ヒーリー殿」
野戦指揮所には参謀長のメアリ、副軍団長のアレックス、司令部大隊長のモルガンが詰めていた。アンジェラは司令部の面々を見回すと、ヒーリーに尋ねた。
机に肘をついたヒーリーはアンジェラを見た。目にくまができ、生気がない。ここ連日の疲れが出ているのだろう。
「アンジェラ隊長、連隊を率いて、先陣まで行って欲しい」
「ピット軍団長を援護するというのですか?」
「あぁ。だが、君は伏兵だ。これを見てくれ」
ヒーリーは地図を広げると、作戦室の全員に見せた。
「見てくれ。ミュセドーラス平野の入り口に小さな渓谷がある。ここに敵の一隊をおびき寄せて欲しい」
「一隊とはいえ、恐らく軍団単位で敵は行動するでしょう。我が連隊の5倍以上の兵力ですが……」
「できないかな? アンジェラ隊長」
ヒーリーは挑戦的な笑みを浮かべた。と彼は思っただろう。しかし、周囲の目は逆だった。目だけが異様にぎらついていた。ヒーリーの心中を察したアンジェラは不敵に笑うと、ヒーリーに返した。
「そのための遊撃混成連隊。アルレスハイム連隊です。お任せください」
アンジェラは金の髪を凛々しく翻すと、作戦室を後にした。