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第五章 決戦! 第五十四話

ここで、タワリッシは味方軍団を囮にするというアイデアを初めて打ち明けた。作戦室にいた諸将はざわついた。メアリも驚きを隠せず、ヒーリーを見た。ヒーリーは全てを知っていたかのように冷静にタワリッシの方を見つめていた。


「・・・・・・それで、誰を囮にするおつもりですか?」


メルキド軍第六軍団長のラシアン・フェイルードがタワリッシに尋ねた。彼は一同の疑問を真っ先に尋ねたのである。でなければ、会議は紛糾し、諸将は一心にならないだろう。冷静なラシアンならではの判断だった。


ヒーリーはフランシスの顔を見た。ヒーリーと目が合ったフランシスは目を閉じると満足そうに頷いた。


「我が軍の第一軍団が、その任を果たしましょう」


ヒーリーはタワリッシとスプリッツァーに告げた。


「おい、ヒーリー! お前、何を言っているのかわかってるのか!?」


フォレスタル軍第三軍団長のウィリアム・バーンズが激昂して席を立った。


「私も同感だな。貴軍らは援軍。これはメルキド軍とワイバニア軍の戦いだ。友邦を率先して犠牲にしたとあっては武門の名が廃るというものだ」


メルキド軍第二軍団長ヴィア・ヴェネトがヒーリーを睨みつけた。今のメルキド軍は彼の親友とその軍団を犠牲にした上に立っている。フォレスタル軍の自己犠牲は彼のプライドに傷をつけた。


「ヴェネト軍団長・・・・・・失礼な物言いを承知を話をさせていただきます。現在のメルキド軍の中で、ワイバニア軍を引きつけるだけの価値のある人物はタワリッシ大将軍のみ。そして、我が軍にもそれだけの人材はピット軍団長しかいない。タワリッシ大将軍が全軍の指揮のためここを動けないとなると、直率できる兵力を持ち、ワイバニア軍を長期にわたってひきつけることができるのは、ピット軍団長だけです」


ヒーリーは退かずに話した。テーブルの机の下で彼は拳を握りしめていた。彼の味方はフランシスとタワリッシしかいなかった。メルキドの誇りに傷をつけ、味方に、それも自分の師に「死ね」と言うのである。会議室に重苦しい雰囲気が漂い始めた。ヒーリーはメアリの方をちらりと見た。メアリは茫然自失していた。自分の好きな人が実の祖父を死に追いやる言葉を口にしたのだ。軍人としてヒーリーの考えは理解出来た。理と情の間で、メアリは揺れに揺れていた。


「ヒーリー殿下の言う通りだ。殿下、かたじけなく思います。フォレスタル軍からの申し出、ありがたくお受けする」


「大将軍!」


タワリッシは彼に反対しようとした第五軍団長のローサ・ロッサを手で制した。


「ローサ・ロッサ。ヒーリー殿下の指摘の通りなのだ。この作戦、我々だけではワイバニア軍をおびき寄せることは出来ない。我々の中でそれが出来たのは、ヴィヴァ・レオだけだった。彼を失った今、同じことが出来るのはピット卿だけなのだ」


メルキド軍もフォレスタル軍も認めざるを得なかった。それほどフランシスとヴィヴァ・レオの才が傑出していたということを。タワリッシは一時小休止を提案すると、軍議を一時中断させた。


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