第五章 決戦! 第四十二話
「すまないね。メル。せっかくの友達とお茶を邪魔してしまった」
「いえ、マクベス殿下。それよりもヒーリー殿下とアストライアを頼みます」
メルは椅子から離れると、ヒーリーの兄二人に深く頭を下げた。マクベスとエリクは少女の思いに応えるべく、深くうなづいた。
翌、7月10日早朝、城の中庭には、エリクの家族、マクベス、メル、ジェイムズが集まっていた。
「お気をつけて。あなた。どうか、ご無事で・・・・・・」
エリクの妻、アルカディアが愛する夫を抱きしめた。
「行ってくる。アルカディア」
「父上、お土産を買って来てね」
エリクの息子トマスが無邪気なお願いを言って父のすねにしがみついた。エリクは笑うと、息子を抱え上げ、自分の方に乗せた。
「ははは、父上はあそびにいくわけじゃないからな。お土産は無理だ。トマス、一週間で戻る。だからそれまで、母上を守ってやるんだ。できるな?」
「うん!」
「ようし、いい返事だ!」
エリクは肩に乗せた愛息の頭をくしゃとなでると、妻に息子を抱かせた。
「ポーラ、準備はいいか?」
「はい」
アストライアが収められた鞄を抱えたポーラは頷くと、エリクと共に翼竜に跨がった。
「アトラス!!」
エリクは愛騎に呼びかけると、アトラスは大きな翼を広げ、天へと飛翔した。
星王暦2183年7月10日、フォレスタル王国王太子エリクシルと侍女ポーラはメルキド公国ミュセドーラス平野に向け旅立った。